ECUと掛け合わせたフローティング情報は「死んでも出さない」
---- 今回、インターナビ・ルートの導入によって、「ルートの精度・品質」が大幅に向上しました。今後はフローティングカーの情報インフラの上で“どれだけよいルートが提案できるか”が重要になり、基本的な情報収集のスキームは共有化の方向に進むということでしょうか。

今井 そうですね。これからは「本当によいルート」をお客様に提供することが重要になると思います。競争領域が、もう一段、上位のレイヤーに移行したと考えていただければいいでしょう。

---- ところで、フローティングデータの収集スキームを見ますと、今回発表されたインターナビから、ECUからの情報もかなりの精度で集めるようになっていますね。

今井 はい。具体的には、単位時間あたりの燃料噴出量情報をリアルタイムで集めて、それを地図上にマッピングできるようになっています。これは自動車メーカーにしかできないフローティング情報でして、今後、これが集まりますと、道路ごとに「クルマがどれだけ燃料を噴出したか」がわかります。つまり、アクセル稼働が統計化できるわけですね。

---- それが地図上に付加されて、しかも車種ごとの燃料噴出量の変化まで見られるとなると、ものすごい価値のある情報になりますね。それは他社には提供しない、と。

今井 絶対に出さない。死んでも出しません(笑)

---- しかし、リアルタイム渋滞情報だけでなく、道路ごとの燃費情報まで蓄積統計化されて、それがインターナビ・ルートの基礎データとして用いられると、“インターナビに接続したホンダ車”の実用燃費は飛躍的に向上しますね。パワートレインの革新に匹敵する、大きな燃費向上技術に進化する可能性があります。

今回のインターナビは、カーナビの在り方を変えるだけでなく、情報通信技術によってクルマの性能も変革させられるという点で、まさにパラダイムシフトと言えそうです。

今井 今の時代だからこそ、クルマの楽しさを、経済性や環境ときちんと両立させたいという想いはあります。(インターナビで)あらためて、ファン・トゥ・ドライブを実現したいのです。

---- ありがとうございました。

《インタビュアー:神尾寿(通信・ITSジャーナリスト)》
《写真:三浦和也》

今井武(いまい・たけし)

1954年生まれ。1976年ホンダ入社後ドライブコンピュータ、メッカコンパスの開発に携わる。1988年からナビゲーションシステムの開発に参加。1990年世界初、デジタルマップマッチングナビゲーションシステムをリリース。1996年北米でカーナビゲーションをリリース。ファクトリーオプションとして世界初。1997年インターネット対応、ふらつき検知警報ナビゲーションシステムを世界初リリース。2002年インターナビ・プレミアムクラブ発表。2003年よりインターナビ推進室室長。
神尾寿(かみお・ひさし)

通信・ITSジャーナリスト。IT雑誌契約ライターを経て、大手携帯電話会社の業務委託でデータ通信ビジネスのコンサルティングを行う。1999年にジャーナリストとして独立。通信分野全般に通じ、移動体通信とITSを中核に通信が関わる分野全般を、インフラからハードウェア、コンテンツ、ユーザーのニーズとカルチャーまでクロスオーバーで見ている。レスポンス特約記者およびレスポンスビジネスユニットの客員研究員も努める。記事執筆先は、レスポンスのほか、朝日新聞社、日経BP社、世界文化社、徳間書店などの専門誌および一般誌。著書は『自動車ITS革命』など。その他講演多数。
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インターナビ 特別編集