auよ、お前もか
――これは前回も俎上にあげたテーマですが、テレマティクスの普及を考えると、必ずぶつかるのが「通信のボトルネック」です。具体的には自動車メーカーのテレマティクスと、携帯電話との接続性や携帯電話サービスとの連携が必ずしもうまくいっていない。まず、接続性の課題では、今年はブルートゥース(Bluetooth)が注目されています。ドコモ、au、ボーダフォンからブルートゥース(Bluetooth)内蔵携帯電話が発売されましたし、自動車メーカーでは日産がカーウイングスでブルートゥース(Bluetooth)を標準採用しました。

今井 我々も来年、対応する方向で準備しています。

――ブルートゥース(Bluetooth)に関しては自動車メーカー側は推進する方向で姿勢を明らかにしています。あとは携帯電話キャリアの対応次第、下駄が預けられた形です。そして、もうひとつ私がボトルネックになっていると思うのが、実際に通信を行うレイヤーです。第三世代になっても、ホンダと日産のどちらもパケット通信ではなく、回線交換(ダイアルアップ)方式で通信をしていますね。

今井 その理由は前回もお話しましたが、今の携帯電話キャリアの料金システムだと、テレマティクスが利用するパケット通信はパケット料金割引や定額制の適用外になってしまい、結果的に回線交換よりも通信料が高くなってしまうからですね。

――しかし、携帯電話キャリアは明らかに通信サービスの今後は「パケット通信」という姿勢です。実際、パケット通信の速度はドコモFOMAが最大384Kbps、auのCDMA 1X WINが最大2.4Mbpsで、来年ドコモが投入するFOMAの高速化もパケット通信が対象です。一方、回線交換はFOMAで64Kbpsと高速化されていますが、auは14.4Kbps、第2世代のPDCでは9.6Kbpsでしかありません。ユーザーを取りまく環境で、ケータイはパケット通信にシフトし、高速化の恩恵を受けるのに、クルマは蚊帳の外のままです。

今井 キャリアがクルマもパケット料金定額制に含めてくれればいいのですが。そうならないとユーザーのメリットはありませんし、我々はパケット通信対応に切り替える事ができません。

――あと、これは問題だと思ったのですが、auのCDMA 1X WINは回線交換によるデータ通信サービスに対応していませんよね。パケット通信しかできない。

今井 ええ、CDMA 1X WINのユーザーは、ハンズフリー通話はできますが、インターナビの通信サービスはご利用いただけません。ドコモのFOMAがPDCと接続端子のコネクターを変えてそれに来年ようやく対応できると思ったら、今度はauが回線交換ができないCDMA 1X WINを持ってくる。テレマティクスにとって頭の痛い問題ばかりです。

――auよ、お前もか、といった感じですね。ただ、携帯電話キャリアにとっては、周波数が逼迫する中、通信のトラフィックをデータ通信専用で利用効率のよいパケット通信用周波数に逃がそうとするのは、大きな流れです。

今井 携帯電話キャリアにはクルマやテレマティクスの事をもっと考えてもらいたいのですが。こういう状況が今後も続くと、通信モジュールをやっぱり採用しなければならないのかな、という気もします。
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