【池原照雄の単眼複眼】国内市場、当面の実力は年500万台水準

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トヨタ プリウス(参考画像)
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15年度はバブル期ピークの980万台から半減

日本自動車工業会がこのほど発表した2016年度の国内新車需要見通しは、15年度見込み比6.5%増の526万台と3年ぶりにプラスに転じる数字となった。ただし、17年4月からの消費税増税を前に生じる駆け込み需要を織り込んでおり、それがなければ「15年度並みくらい」(池史彦自工会会長)との観測だ。

その15年度の見込みは494万台(前年度比6.8%減)と、4年ぶりに500万台を割る。国内市場のピークはバブル期の1990年度に記録した980万台だが、今やその半分程度に縮小した。少子高齢化の加速という現実や、ここ10年のトレンドなどを勘案すると、当面は足元の500万台水準が日本の実力ラインとなりそうだ。

自工会の16年度の見通しのうち、登録車は15年度見込み比5.3%増の330万台、軽自動車は8.5%増の196万台と予測されている。軽自動車は15年4月に実施された「軽自動車税」の1.5倍への増税が響き、15年度は17%程度の大幅落ち込みとなる。16年度はそこからの回復となるため、高めの伸びが見込まれている。

また、16年度全体としては526万台の予測だが、前述のように17年度の消費税引き上げに伴う駆け込み需要の発生を想定したもの。実力は15年度レベルであり、「依然厳しい状況が続く」(池会長)というのが自工会の見解だ。

◆この10年の年平均需要は510万台

少し長期のトレンドで国内の新車市場動向を振り返ってみると、2006年度から15年度までの10年間の総需要は約5100万台だった。この10年はリーマン・ショック(08年)、東日本大震災(11年)、1997年以来の消費税増税(14年)といった激動期であり、経済対策としてのエコカーへの補助金や減税も実施された(現在もエコカー減税は継続中)。しかし、それでも年平均では510万台レベルにとどまった。

ちなみにその前の10年間(96~05年度)の総需要は約6050万台で、年平均は605万台。15年度までの10年間は、05年度までの10年間に比べ、年平均95万台もの需要が失われたことになる。少子高齢化の影響だけでなく、品質や性能の向上に伴う平均使用年数(車両の平均寿命に相当)の長期化など、複合的な要因が作用している。乗用車(軽自動車除く)の平均使用年数は15年3月末時点の統計で12.38年であり、10年前の05年同月末の10.93年より、約1.5年延びた。

◆20年以降は団塊世代の“クルマ離れ”が市場減退のインパクトに

ただ、古い車両への課税強化もあって、ここ数年で平均使用年数は頭打ち傾向になっている。実際、15年の同年数は3年ぶりの減少だった。これからも自動ブレーキをはじめとする安全技術や自動運転の要素を取り入れた技術の実用化など、買い替えを刺激する商品の登場によって平均使用年数は、そう延びないと見てよいだろう。

それよりも新車需要への大きなインパクトは、青年期からクルマに親しんできた団塊の世代がクルマの保有を放棄する年代になってくることだろう。この世代がすべて古希(70歳)を迎えるのは2020年であり、その辺りからジワジワと影響が出そうだ。当面は年500万台水準の需要がアベレージとなりそうだが、その先は悲観的にならざるを得ない。

自動車各社はトヨタ自動車で300万台、日産自動車で100万台といった具合に、日本での技術革新や雇用への貢献のため、国内生産の“維持ライン”を掲げている。それを守るには一定の輸出向け車両を国内生産で確保するといった中期的な手立てが、すでに必要な段階になっている。

《池原照雄》

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