三浦:コンテンツ配信のための通信インフラも重要になってきますね。
会田:私はサイファを購入してG-BOOKを利用しているのですが、通信もハードもまだまだだと思いました。及第点となるのは、銀行や郵便局のATMくらいでしょうか。
神尾:広域通信に関しては、CDMA2000 1xEV-DOに期待しています。あとは、狭域通信の低価格・大容量化がどこまで普及するのか。
三浦:ETCの技術を応用したDSRC(狭域無線通信)ですね。
神尾:DSRCは通信速度が4Mbpsと若干遅いのも気になるけど、やっぱりいちばんの問題は技術の汎用性がないところ。もしDSRCでネットワークを作ったとして、それでバックボーンがどれだけ共有化できるかという問題がある。民間が使いこなすことが難しい。一方、無線LANでホットスポットサービスエリアを作れば、それはクルマだけじゃなくてノートパソコンユーザーとかも利用できますよね。汎用の無線LANであればクルマも人も共有できるし、機器の価格も随分下がってる。
三浦:僕はDSRCの可能性ってまだ未知数だと思ってます。それはiモードのような課金システムが構築できる可能性があるから。無線LANインターネットのようなフリーなネットワークだと独自に課金しなくちゃならないから、ビジネスになりにくい。DSRCでなく無線LANを使ってしまうと、今のECサイトと同じような難しさが出てくると思うんです。
会田:DSRCはETCで使われていて、実際課金システムが構築されてたりしますよね。で問題は、国がそういうDSRCなり課金システムなりを広く一般に使わせてくれるかどうかだと思います。
三浦:DSRCを使ったドライブスルーでの実験などがありますよね。
会田:そのシステムがインターネットのように低コストで一般が利用できるとは限らない。それに、現状のETCのバージョンでは汎用型DSRCには対応できないっていう問題がありますね。せっかくETC端末を買ってもDSRC対応のためには買いなおさなければならない。
神尾:ETCといえば、将来実現するメリットをもっとユーザーに先行して還元していかないとダメですよね。ETCを運営するメリットってふたつあるんですが、まずひとつは細かい区間で課金ができること。たとえば首都高の区間別で課金なんていうこともできるようになる。
それともうひとつが無人ゲートをたくさん作れること。現実的に公団でできるかどうかは分かりませんが、ITの基本である人員削減の可能性があります。
基本的にITって節約の技術なんですよね。コスト、時間、手間の節約。この3つのうちひとつないしふたつを兼ねてない情報サービスなんていうのは成功しないんですよ。
三浦:今すぐできることって結構多いはずなんです。首都高乗り降り自由とか。
会田:4月から長距離割引は始まりますよね。あと夜間割引、それと首都高の短区間割引。とにかくそういうユーザーメリットを増やしていかなくちゃいけませんよね。
僕が最初にETCを取材したとき、担当者は「あれは車載の道路インフラだ」と言ってましたね。ETCをナンバーのようにユーザーにどんどん配ってしまう。それでETCじゃないと通行できません、というくらいに大規模なものにするという計画だった。
しかし、税金でETCを作ってるのに、一部のユーザーだけにメリットを還元するというのはよくないという考え方に押されて、緊縮財政という風潮もあって端末配布を断念した経緯がある。
三浦:ADSLモデムのようにETC端末をレンタルすればいいのに。月額300円くらいで。
会田:それは一応始まるみたいですね。国土交通省が中心になって始めるようです。
三浦:それが始まるなら、DSRC互換の問題もとりあえずクリアなのかな。当面このまま使っておく、と。で時期がきたら次のものに乗り換える。
神尾:レンタルは歓迎だけど、ETCの端末を小売りする際、インセンティブを設けるべきでしたよね。もしETCが主流になったとき、公団は費用、いわゆる人件費などを圧縮できるわけですから、その利益を端末価格に上乗せするべきだった。
会田:まあそういう発想ができれば、今の公団じゃないわけで(笑)。
神尾:DSRCもETCもネットワークの利用効率っていう発想がありませんからね。通信の世界って、ネットワークが空いてるのがまずもったいないことなんですよ。空いてる時間帯や空いてる区間があれば、安くてもいいからそこを埋めてしまえと。埋めることによって、利用者が増える。それでネットワークの利用効率が上がれば、最終的にはプラスであるって発想なんです。
会田:まあ、国土交通省の話をいろいろ聞いていると、今年がある意味元年だというつもりでやるらしいので。それだけ思いきったことをどんどん展開していきたいと。二輪車も年度内には始まるらしいですからね。
三浦:3度目の正直で、今年はETCに期待かな。でないとその先がない。
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