top interview by Teruo Ikehara
東京モーターショーは大丈夫
----米国では5月の新車販売で日本車のシェアが初めて40%を突破しました。需要構造の転機ということでしょうか。

青木 住宅ローンにかかわる問題に加え、ガソリン価格も大幅に上昇している。乗用車系は比較的堅調ですが、ライトトラック系はどうしても、燃費への反応が出てしまう。とくに5月はそういう状況でした。

シェアは結果ですから、全体のマーケットの状況や各社のクルマの競争力によって刻々と変わります。ただ言えるのは、燃費の良いクルマへの関心がますます高まるのでしょうね。日本車という括りではなく、そうした需要に合致したクルマを提供できるメーカーが伸びていくのだろうと見ています。

----規模の面でも米国市場は、後退するのでしょうか。

青木 昨年に比べれば若干落ちるわけですが、全体としては1500万台プラスという規模ですから、依然として大変高いレベルにあります。経済全体の問題や、クルマについていえばガソリン価格の問題もありますが、中長期的には伸びていくし、重要なマーケットです。ライトトラックの需要も極端に減少するわけではありません。

----燃費性能という点では小型車のウェートが高まり、収益面での影響も考えられます。

青木 世界的な傾向として小型化というか、燃費のいいクルマをということになっている。マーケットの要求ですから、そういうクルマを提供するのがメーカー側の責任でもあります。一般的に小型車の利益率は低くなるわけですが、コスト低減によってカバーするというのが各社の重要な課題だと思います。小型車でもインテリアのスペースや実用性で、大変評価されるクルマは増えています。それぞれの時代のニーズに合ったクルマを出さないと受け入れてもらえませんから、メーカー各社が努力を続けるということです。

----原材料費高騰への対策では、日本鉄鋼連盟と自工会が鋼材の種類削減など合理化を協力して進めようとしています。

青木 自動車も鉄鋼も大変重要な関係にある産業ですから、自工会として投げかけをさせていただいています。たとえば、鉄鋼の方の生産性を阻害しているような要因はないのか、お互いのメリットとなるようなことはないのかということで、検討いただいている段階です。

----自工会が主催する東京モーターショーは、入場者もやや伸び悩み傾向にあります。活性化策は?

青木 昨年は目標を少し下回りましたが、前々回に比べて休日の日数が少なかった関係もあるので、そこはそう心配していません。しかし、世界では各国でインターナショナルショーを開催したという動きがあるわけですから、やはり、今後とも東京モーターショーを魅力あるものにしたい。来年に向けて知恵を絞っていきたいと考えています。
青木 哲
青木 哲(あおき・さとし)
東京外大英米語学科卒後、1969年にホンダ入社。89年からイタリア現地法人2社の社長を歴任後、94年にホンダの財務部長に就任。95年取締役、98年常務(管理本部長)、2000年専務、05年副社長を経て07年から会長。同年に自工会副会長となり、08年5月の総会で会長に就任。ホンダでは財務や経理など管理部門が長いが、「幅広い趣味」のなかでは、モータースポーツの観戦と1950~60年代のヒストリックカーの鑑賞が中心という。数字に強いだけでなく、レースにも熱くなるホンダマンの血が流れている。1946年生まれの61歳。
池原照雄
池原照雄(いけはら・てるお)
1977年北九州市立大卒。日刊自動車新聞、産經新聞などで自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリー。著書に『トヨタVS.ホンダ』(日刊工業新聞社)。山口県出身。

インタビュアー:池原照雄(経済ジャーナリスト)
写真:竹内征二
最初のページへ
Page: 4 of 4 
Page 13つの課題がある
Page 2クルマの魅力は世界共通
Page 3少なくとも取得税と重量税は廃止に
Page 4東京モーターショーは大丈夫
日本自動車工業会 特別編集
ホンダ 特別編集