----- ところで、今回のG-BOOK mXは「ドライバーにとって非常にお得」という印象を受けています。3年間の地図更新やプローブシステム、ヘルプネットなどがすべて無料ですし、DCMを使うG-BOOK mX PRO契約でも初年度が通信費含めて無料、その後も年間12,000円で通信料の負担がない。コスト構造的に大丈夫なのか、と少し不安になってしまいます。
友山 (低価格で提供できる理由の)ひとつには、データセンターとかソフトウェアの初期投資があるていど償却してきていることがあげられます。ですから、コスト構造的には成り立っています。
むろん、コスト見合いが取れた上で「どれだけ利益を乗せるか」を考えなければならないわけですけれど、ここは特にレクサスにおいてクルマの価値向上・差別化においてテレマティクスが寄与したことが、ビジネスモデルの解決策になっています。
----- トヨタ、そしてレクサスの「クルマを売るためのG-BOOK」ですか。
友山 カーナビの付加価値向上ではなく、数百万円を超えるクルマの付加価値であり、特にレクサスはブランドの付加価値にもなる。これはレクサスG-Linkで手応えがあった部分です。
ですからテレマティクスのコストというのは、テレマティクスというサービス単体で収益をあげるのではなく、自動車ビジネス全体の収益の中で考えています。そうすると、G-BOOK mXは決して「安売り」しているわけではない。
----- クルマのコモディティ化やプロダクトのみでの差別化の難しさは、以前から自動車ビジネスで指摘されてきましたが、その上で付加価値・差別化要因になるのがテレマティクスである、と。
テレマティクスはこれまで「情報サービス」としてビジネスモデルの試行錯誤がされてきたわけですが、クルマにとってのデザインやブランドと同じ土俵に乗せることで、ビジネスモデルの整合性が取れそうですね。
友山 むろん、サービスとしての採算性は取れた上ですけれど、さらに数倍の利益をテレマティクスが生み出すのが、クルマの付加価値向上の部分になります。実際、レクサスではG-Linkの訴求力や顧客満足度に与える好影響が大きいですから、このあたりのノウハウの蓄積が役立っています。
《インタビュアー:神尾寿(通信・ITSジャーナリスト)》
《写真:益田和久》
|