トヨタが作るプローブシステム
---- 地図更新と並んでG-BOOK mXで注目なのが、プローブコミュニケーション交通情報、プローブシステムの導入です。ここは他社が「テレマティクスはカーナビの延長線」というコンセプトで注力してきたところですが、トヨタもいよいよ本格導入する、と。

友山 これまでのG-BOOKはDCMベースで、安全・安心を柱にしてやってきた。しかし、G-BOOK mXではカーナビの機能強化に重点を置いたのは確かです。『より多くのドライバーに、テレマティクスのメリットを身近に感じてもらいたい』というのがG-BOOK mXの大きなテーマですから、その中でマップオンデマンドと対をなすのが、プローブコミュニケーション交通情報になります。

---- 確かに今回はG-BOOK mXやDCMのメリットが、よりわかりやすくなってますね。プローブコミュニケーション交通情報でも、DCM搭載の方がメリットが大きい。

今回、プローブシステムの導入としては他社より後になったわけですが、「トヨタのプローブ」の特徴はどういったところになるのでしょうか。

友山 トヨタのプローブの特徴は、リアルタイムプローブにウェイトを置いていることですね。(ホンダ インターナビのように)過去の統計値情報を利用する仕組みは当然用意されているのですが、「いま混んでいるのか、いま空いているのか」がリアルタイムで把握できなければ意味がない。

このリアルタイムプローブを実現するにあたり、ここでもDCMが非常に重要な役割を担っています。携帯電話接続で実現するプローブ(フローティング)システムだと接続の手間や通信料がかかるという課題がありますから、カーナビ内に過去の渋滞情報を蓄積しておいてセンターにアップロードする仕組みを取らざるを得ない。これだと蓄積情報の統計値による渋滞情報しか提供できないのです。

一方、DCMでしたらお客様の通信費負担は定額になりますから、10メートルごとのデータ蓄積して5分ごとにセンターに送るといったきめ細かな情報取得・提供ができます。我々のテストでは、DCM装着車は携帯電話接続のプローブシステムに比べて約60倍のデータ収集能力があります。リアルタイム性において、(ホンダや日産など)既存のプローブシステムよりも優れているといっていいでしょう。

---- そのリアルタイム性の担保をするには、DCMを積んだクルマが多ければ多いほどいいのですよね。とすると、G-BOOK ALPHAやG-LinkのDCM搭載車もソフトウェアの更新でプローブシステムに対応させることはできないのでしょうか。

友山 今回のプローブコミュニケーション交通情報はマップオンデマンドと対になっています。「新しくて正確な地図」が基盤になっていますから、G-BOOK ALPHAやG-Linkのソフトウェアを一部書き換えて対応というのは難しいのです。また、プローブではプライバシーが保護されているといっても車両から情報送信する形になりますので、(契約時の)約款も変わってしまう。諸々の条件を考えると、ソフトウェア交換だけで対応させるのは難しいのです。

ただ、幸いなことにDCM搭載車にお乗りのお客様は(DCMの)継続ニーズが高く、次に車を買い換えていただいた時には(G-BOOK mXで)プローブコミュニケーション交通情報をご利用いただけると考えています。

---- なるほど。では、プローブ情報の精度を上げるには、G-BOOK mXでDCMを搭載するユーザーが増えていく必要がありますね。

友山 すぐに増えてくると思いますよ。幸い、うちは多くのクルマを買っていただいていますから。'08年にはG-BOOKユーザーが100万人を超えると予想していますが、その中でG-BOOK mXを積極的に増やしていきたい。

---- 先代G-BOOK ALPHAではトヨタ中央研究所製の「3レンジ複合予測」という渋滞予測アルゴリズムを導入されていましたが、こちらもプローブ情報対応に変わったのでしょうか。

友山 ええ、より正確な渋滞予測ができるようにアルゴリズムを含めて強化しています。3レンジ複合予測をさらにチューニングし、そこにプローブコミュニケーション交通情報も組み合わせたのです。

じゃあ他社(の渋滞予測)と比べてどうなのか、という問いに数値を持って答えられないのが歯がゆいのですけれど、以前のG-BOOK ALPHAでも他社と比較試乗して負けるものではありませんでした。さらに今度はプローブもつきましたので、G-BOOK mXの渋滞予測・回避システムは一級品以上になっていると思います。

---- ところでトヨタはプローブカーの実験で、タクシーなど商用車を使った実証実験をしていましたけれど、今後、タクシーやレンタカーなど商用車からプローブ情報を集める可能性はありますか。

友山 今すぐにそういった計画はありませんが、プローブ情報を効率的に集める方法はいろいろと検討していきます。タクシーを使うとか、トヨタとして都市部でプローブカーを走らせるとか(笑)

---- トヨタの場合、グループにトヨタレンタカーがありますし、カローラなどはビジネス利用も多い。プローブ情報の取得のみにフォーカスして、これらの"トヨタ車"を活用するのは効果的かもしれません。

友山 ほかにもトヨタの輸送部門もありますね。全国7千拠点に1日2回くらい、トヨタの部品をデリバリーしている。こういったクルマに(プローブシステムを)載せるとか、いろいろと考えていかなければならないでしょうね。

《インタビュアー:神尾寿(通信・ITSジャーナリスト)》
《写真:益田和久》
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