top interview by Teruo Ikehara
ウチは黙っていても「走り」だから
−−クルマの市場そのものが変わっており、走行技術が評価されて売れるという現象は少なくなっています。

 その通りですね。とくに日本で顕著だと思うのですが、どちらかというとクルマが日用品化している。従って、今までのわれわれの方向性からすると、苦しい部分があるのは事実です。

では、丸っきりスバルの特徴を捨ててマスマーケッターとしてやって行けるかというと、そうではありません。プレミアム性をもったプレーヤーとしての方向はそれでよい。ただし、マルチパッセンジャーやコンパクトなど、今の市場で戦えるクルマもちゃんと出していかなければなりません。そのなかでスバルの特徴をきちんと出して行こうということです。

もっとも、「走り、走り」と言うのは、いまは止めろと言ってます。ウチの技術陣は、黙っていても「走り」のクルマを作るんですね(笑)。だから、「走り」ありきでなく環境もあるし、安全もある、コンパクトカーもある。そうしたお客様の要望がまずあって、その中でわれわれとして「走り」をどう極められるかだということです。考え方の順番を変えてくれと言っています。あくまでもお客様のニーズにどう手を打っていくのかが基本ですから。

−−「プレミアム性」というのは、決して高級なということではないのですね。

 そうですね。われわれとしては、あくまでもバリューという捉え方です。きちんと走るという基本性能を押さえて個性化を追求するという意味でのプレミアムです。

−−営業を長く経験した経緯から、スバルはまだ顧客志向が不十分ともおっしゃっていましたが。

 まだまだ「作り手の論理」というのがあると思います。水平対向エンジンとAWDというのがコアとなっているので、確かに作る側から言えばコンパクトなクルマは難しいとか、出てくるわけです。そこをどう克服していくかであり、作り手の論理ではいけないということです。

お客様の感覚や立場でキチンとできていないというのは、商品開発だけでなく、残念ながら当社の体質としてある。いいクルマを作れば売れるんだよという感覚が末端まで、まだあるんじゃないかなと思っています。開発から販売・サービスに至るまですべてのステージで、もう一度「お客様の立場に」というのを徹底していきたいと考えています。


インタビュアー:池原照雄(経済ジャーナリスト)
写真:竹内征二
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