プラットホーム戦略の立ち位置は?
――現在、カーウイングス以外に、トヨタのG-BOOK、そしてホンダのインターナビプレミアムクラブと、大きく3つのテレマティクスプラットホームがあります。このうちG-BOOKは他の自動車メーカーにプラットホームの傘を拡げるのに熱心であり、一方、インターナビプレミアムクラブはホンダ車のためだけのプラットホームと位置づけています。カーウイングスは、例えば実績のあるオペレーターサービスなどは他の自動車メーカーやカーナビメーカーが「欲しいサービス」だと思うのですが、今後のプラットホーム展開についてどのようなお考えをお持ちですか。

野辺 まず現状すでにスズキにカーウイングス、BMWにオペレーターサービスのアウトソーシングを行っています。その上で、さらに他社にも提供するかといえば、ノウハウにあたる部分はもちろん出しませんが、サービスとしては「絶対出さない」ということではありません。

――しかし、今回のサービス料金改定で、カーウイングスは日産車オーナーの満足度を向上させる「営業ツール」的な位置づけになったのではないかと思います。それが他社でも使えるとなったら、テレマティクスを差別化要因のひとつにするという目的と相容れない部分が出てきませんか。

小泉 テレマティクスを日産車のバリューとするのは大前提です。そう考えると他社にプラットホームを提供するのはマイナスではないかという見方もあるのですが、一方でプラットホームビジネスという見方をすれば、利用者が増えて設備利用効率が上がるメリットは無視できない。クオリティの高いサービスを低価格で提供できるようにするには、(プラットホームが収容する)ユーザー数は多い方がいい。

――プラットホームの拡大による設備利用率向上というメリットと、サービスの平準化によってユーザーの「付加価値」意識が失われるというデメリット。これはプラットホームビジネスが抱えるジレンマです。

小泉 我々としては、プラットホームが拡大しても「日産車のバリュー」を失わせない鍵になるのが、HMI(ヒューマンインターフェイス)や各種サービスの部分だと考えています。同じプラットホームを使っていても、インターフェイスやサービス、コンテンツの部分に違いがあれば、十分に差別化できるでしょう。

――オープン志向の強いトヨタ、クローズド志向のホンダに対して、日産のプラットホーム戦略の立ち位置は?

小泉 ちょうど中間ですね(笑)

――第3世代カーウイングスはまさに今、誕生したばかりですが、今後どのような方向を目指していきますか。

野辺 第3世代カーウイングスでは、“シームレス”がひとつのキーワードになっています。エンハンスドナビとして、カーナビとテレマティクスが密接に連携する。Bluetoothでカーナビとケータイが簡単に繋がる。渋滞予測情報を使った最速ルート案内など、高度なナビゲーションサービスも、オペレーターサービスを使って誰でも利用できる。これらはすべてシームレスであり、これが今後のカーウイングスにおける方向性になります。

小泉 今後の部分でいえば、携帯電話キャリアが持つ豊富なコンテンツとの連携も考えていきたいですね。テレマティクスとケータイコンテンツの連携には大きな可能性があります。

――具体的には?

野辺 それは遠くない時期に再びお話できると思います。テレマティクス、カーナビ、そしてケータイも含めて、様々な形で日産車オーナーのカーライフスタイルをサポートしていく。それが1998年のコンパスリンクから第3世代カーウイングスまで続く、日産のテレマティクスに対する姿勢です。


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野辺 継男(のべ・つぐお)
野辺 継男(のべ・つぐお)
(早稲田大学理工学部応用物理学科卒、ハーバードビジネススクールMBA留学、ハーバード大学院客員研究員)1983年某日系電気会社入社、パソコン事業に関連した海外事業部門、国内製品技術部門、及びソルーション事業部門にて、国内外での各種プロジェクト立ち上げに従事。(特にビデオオンデマンド、テレビ会議システム、地上波放送・衛星放送・データ放送対応、各種インターネット利用技術等、通信や放送との関連分野での新事業開拓)。2000年末退職後、国内最大級のオンラインゲーム会社立ち上げを含み、複数ベンチャーの立ち上げや事業支援に従事。2004年4月 日産自動車(株)入社、プログラム・ダイレクター オフィス カーウィングス担当主管。

小泉雄一(こいずみ・ゆういち)
小泉雄一(こいずみ・ゆういち)
(日本大学大学院理工学研究科修士課程修了)1991年4月 日産自動車(株)入社。設計部門にて中型4気筒エンジンの設計、エンジンコントロールユニット開発に携わった後、1998年7月より商品企画部門へ異動。フェアレディZ復活の企画提案や北米インフィニティチャネルの中長期商品ラインナップの企画を行う。2000年1月よりカーマルチメディア系の商品戦略を担当。2004年4月よりカーウイングス戦略に専任、プログラム・ダイレクター オフィス カーウィングス担当主担。

神尾寿(かみお・ひさし)
神尾寿(かみお・ひさし)
通信・ITSジャーナリスト。IT雑誌契約ライターを経て、大手携帯電話会社の業務委託でデータ通信ビジネスのコンサルティングを行う。1999年にジャーナリストとして独立。通信分野全般に通じ、移動体通信とITSを中核に通信が関わる分野全般を、インフラからハードウェア、コンテンツ、ユーザーのニーズとカルチャーまでクロスオーバーで見ている。レスポンス特約記者およびレスポンスビジネスユニットの客員研究員も努める。記事執筆先は、レスポンスのほか、朝日新聞社、日経BP社、世界文化社、徳間書店などの専門誌および一般誌。その他講演多数。

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