逆に切れるハンドル…タダノのクレーン車に欠陥

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国土交通省は9日、タダノが1983年から1998年に掛けて製造した大型クレーン車約1万5000台について、「ハンドルを切った方向とは逆に曲がってしまう」というステアリング機構の欠陥があることを明らかにした。

これを受け、10日に同社はリコールの届け出を行っている。

国土交通省、タダノによると、リコール対象となったのは同社が販売する「ラフテレーンクレーン」と呼ばれる大型クレーン車のうち、1983年から1998年に掛けて製造した16型式、1万5278台。

このタイプのクレーン車は、運転席とクレーンの操作室が一体化された構造になっている。クレーンのアームは360度回転するが、後方位置(180度回転位置)になった際には運転席も後方を向くことになる。

この際、クルマを動かす際のハンドルの操作方向も当然ながら逆方向となるが、リコール対象となったクレーン車には、これを正位置で動かすことを可能とする「逆ハンドルスイッチ」が設定されている。

これを操作すると操舵機構自体が切り替わり、後方位置であっても逆側にハンドルを操作しなくて済むようになる。

クレーンのアームを前方に戻せば、このスイッチは自動的にキャンセルされるようになっていたが、組み合わされる誤作動防止装置に不具合があり、アームが前方に戻っているにも関わらず、後方へ向いていると認識し、ドライバーが意図しないまま逆方向にハンドルが作用するというトラブルが起きることがわかった。

実際の事故も発生している。今年8月7日には岡山県船穂町内の国道2号線で、運転手がセンターラインに近寄りすぎたと思ってハンドルを左に切ったところ、クレーン車はそのまま右側に曲がり、対向してきたワゴン車に突っ込んだ。

この事故ではワゴン車を運転していた33歳の女性が死亡、同乗していた子供5人が重軽傷を負った。

クレーン車を運転していた46歳の男性は警察の事情聴取の際、「ハンドルが一時的に反応しなくなったが、その直後に突然動いた。だが、クルマは自分の意図する方向は反対に進んでいき、結果として対向車に突っ込んだ」と供述した。

警察ではこの供述に基づいて車両検証を進めたところ、本来はアームが前方位置にある際には入らないようになっているはずの逆ハンドルスイッチが何らかの原因で入ってしまい、誤作動防止装置が作動しなかった可能性が高いことがわかった。

国交省でも事態を重く見て、同様の事故が他にも発生していないかを調べたところ、ハンドルが逆方向に切れたことが原因による物損事故がタダノ製クレーン車だけでも5件も発生していたことが判明した。

同社はトラブルが起きる度に修理を行っていたが、国交省では「同社が誤作動防止装置などに欠陥が生じていたことを把握していたにも関わらずこれを看過し、リコールなどの対応が遅れた」と判断。同社に対して業務改善を命じるとともに、リコールの届け出を行うように促し、同社はこれに応じる形でリコールを届け出ている。

また、事故を調べていた過程でコマツとコベルコクレーンが製造する同種のクレーン車でも同様の事故が発生していたことがわかっており、国交省ではこの2社に対しても改善を指示するものとみられている。

《石田真一》

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