地方と自動運転、親和性の高さがわかる2つの事例…境町、気仙沼市【MaaSがもたらす都市変革】

河岸の駅さかいと自動運転バス
  • 河岸の駅さかいと自動運転バス
  • 茨城県境町の自動運転バス
  • 自動運転バスが乗り入れる葵カフェ(茨城県境町)
  • BRTと三陸鉄道
  • 奇跡の一本松(宮城県気仙沼市)
  • 大船渡線BRT盛駅

MaaSを語るうえで欠かすことができないモビリティのひとつが自動運転である。前回のコラムの冒頭で書いたように、どんなにデジタル技術が進歩しようとも、前提として質の高い公共交通がなければMaaSは成立しない。しかし現在、バスやタクシーは深刻な運転手不足に悩まされており、一方ではオンデマンド方式などによる、きめ細かいサービスが求められている。逆に乗務員がいない自動運転レベル4になると、乗務員に運賃を支払ったり、行き先を聞いたりという行為はできなくなる。オンラインで事前検索や事前決済を行うのが一般的になる。自動運転とMaaSは切っても切れない関係にあるのだ。

自動運転というと遠い未来の話と思うかもしれない。それはマイカー(自家用車)に限った話だ。マイカーはいつでも好きなところに行けるというメリットゆえ、走行パターンは日々増えていく。どんなに賢いAIであっても、個々の移動を逐一学習していくのは至難の業だ。ゆえに当面は、いつでも人間が運転を代わることができるレベル3の枠内で、進化を続けていくと言われている。

しかしバスのような移動サービスはそうではない。走行範囲や時間が限定され、運行管理者も特定できるので、はるかにハードルが低い。しかも公共交通の経費における人件費の比率は過半数に及んでいることに加え、昨今は運転手不足という問題もある。自動運転はこうした課題の解決手段としても期待されている。ゆえに自動車メーカーの中でもゼネラルモーターズ(GM)や、同社と業務提携を結ぶホンダのように、この面に注力しているところが出てきている。

加えて日本をはじめ米国やドイツなどで法整備が進んでおり、我が国では自動運転レベル4を自動走行ロボットとともに公道走行解禁とする改正道路交通法が、2023年4月1日に施行される見通しとなった。

レベル2ながら「自動運転の町」として有名に

ではどの地域でレベル4が実用化されるのだろうか。以前のコラムでも触れたように、レベル3の自動運転移動サービスは、福井県永平寺町で実施に移されている。しかしレベル2でありながら、「自動運転の町」としてそれ以上に有名になった自治体がある。茨城県西部に位置する猿島郡境町だ。

東京から約50kmの位置にある境町は人口約2.4万人。2017年に圏央道が開通し、境古河インターチェンジが開設されたが、鉄道は通っていない。よって町内の公共交通は、近隣のJR東日本古河駅や東武鉄道東武動物公園駅などへ向かう路線バス、およびタクシーに限られている。以前は町内循環バスがあったが、利用者低迷で運行終了となってしまったという。町では代わりの交通が必要と考え、地域公共交通網形成計画を策定すると、多方面からの意見やニーズを計画に反映させるべく、境町公共交通活性化協議会も設立した。その中から出てきたのが自動運転だった。


《森口将之》

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