【土井正己のMove the World】テスラ イーロン・マスク氏、燃料電池批判はなぜ

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テスラモーターズ イーロン・マスクCEO(資料画像)
  • テスラモーターズ イーロン・マスクCEO(資料画像)
  • トヨタ MIRAI と水素ステーション(参考画像)
  • 水素ステーション
  • テスラモーターズ イーロン・マスクCEO
  • テスラモーターズ イーロン・マスクCEOとテスラスーパーチャージャー
  • テスラ モデルS
「スペースX」(ロケット打上げ事業)、「ハイパーループ」(超高速輸送システム構想)など新しい発想をどんどんと提案するテスラのイーロン・マスクCEOだが、燃料電池(Fuel Cell)については、「あれは“Fool Cell”だ」と“馬鹿”にした表現で批判し、かねてより話題になっている。


◆EVもFCVも電気自動車

なぜ、彼が、そこまで燃料電池を否定するのだろうか。EVにせよ、燃料電池車にせよ、“電気自動車”であることは同じだ。電気をバッテリーに蓄えて走るのがEVで、水素を積んで空気中の酸素と反応させ電気を作りながら走るのが燃料電池車(FCV)である。おそらく、イーロン・マスク氏は、水素を作る過程でエネルギーを使うことから「エネルギーの無駄使い」と考えているのだろう。

まず、水素はご存知の通り、元素記号はHで、水やアンモニア、メタンなど色々な物質から取り出すことができる。現在は、都市ガス(メタン)から、水素に改質する方法が一般的である。製鉄を行うプロセスからも水素が排出されおり、それらを有効活用することは可能だ。


◆有望な太陽光発電から製造される水素

さらに有望なのが、太陽光発電による電気で水を電気分解して、高圧ガスや液化水素として蓄えておくという方法である。これは、太陽と水(海水)さえあればどこでもできる。太陽光発電による電気だけでもバッテリーに蓄えることはできるが、それを遠距離に送電すると電気抵抗による“送電ロス”(5%~10%)が発生する。これを解決できるのは超電導だけで、その技術はまだかなり先となる。一方、水素は輸送してもロスは起きない。


◆FCVの一番の利点は

FCVが、EVより優っている一番の利点は、充填(EVだと充電)時間だ。FCVの充填は、液体を注入するだけなので、今のガソリン自動車と変わらない。一方、EVは、いくら高速充電器であっても30分は必要とするので、2台待ちとなると1時間待たされることになる。

最近、ニューヨーク・タイムス紙でEV充電についての記事が掲載されたが、「満充電前に誰かが勝手に充電機を外して、自分のクルマを充電した」、「充電が完了しているのに持ち主が買い物をしていて、そのまま放置している」というようなことから、トラブルが頻発しているという。FCVだとこうした問題は起きえない。

また、日本では夏場の日中は、電力供給が能力のピークに達している。大量のクルマを系統の電気で賄うのは、現在の発電能力から言えば困難な状況だ。また、災害などで停電することを考えると、家庭やクルマの全てを系統の電力に頼るのはリスクが大きい。よって、クルマは、複数のエネルギーに分散されるのが、正しい方向だと思う。


◆技術の切磋琢磨が未来をつくる

燃料電池にも、水素の製造、輸送、貯蔵面で色々な課題はある。しかし、充填時間が短いという「ユーザー利便性」、「社会的な経済合理性」は、何と言っても強みだ。EVも「既に電気はどこにでも通っている」という面で、インフラでの優位性はある。PHV/HVにも利点は多くある。これからの交通社会は、用途に応じて、それぞれの利点を生かして、トータルとしてエネルギー効率、CO2の低減を図っていくことが必要である。イーロン・マスク氏が“Fool Cell”と呼ぶということは、FCVが「現実的なEVの競争相手だと認識」してのことだろう。こうした切磋琢磨が未来をつくる。


<土井正己 プロフィール>
グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサル ティング・ファームである「クレアブ」代表取締役社長。山形大学 特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年まで チェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事。
《土井 正己》

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