近鉄、四日市市に「公有民営」提案…内部・八王子線の存廃問題

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近鉄内部・八王子線の路線図。近鉄四日市~内部間の内部線と日永~西日野間の八王子線で構成される。
  • 近鉄内部・八王子線の路線図。近鉄四日市~内部間の内部線と日永~西日野間の八王子線で構成される。

近畿日本鉄道(近鉄)は8月6日、存廃問題が浮上している内部・八王子線について、「公有民営方式」への移行を沿線の三重県四日市市に提案したことを明らかにした。

内部・八王子線は、近鉄四日市~日永~内部間5.7kmを結ぶ内部線と、日永~西日野間1.3kmを結ぶ八王子線で構成されている近鉄の鉄道路線。2本のレール幅(軌間)は762mmで、JRの在来線(1067mm)より狭い。旅客営業路線では現在、内部・八王子線のほか同じ三重県内の三岐鉄道北勢線、富山県内の黒部峡谷鉄道のみ762mm軌間を採用している。

内部・八王子線の輸送人員は1970年度の722万人をピークに減少が続いており、2011年度にはほぼ半分の363万人にまで落ち込んでいる。その一方、特殊な軌間を採用していることから通常の鉄道より維持コストが高く、近年は毎年3億円弱の赤字が続いている。

こうしたことから近鉄は2012年8月、線路敷地をバス専用道に改築してバスを走らせるバス高速輸送システム(BRT)の導入を提案した。同社は今夏までに方針を固めるよう四日市市に要望したが、同市は鉄道の存続を強く求め、協議が難航していた。

近鉄によると、四日市市が「あくまで鉄道としての同線の存続を模索したい」としていることから、公有民営方式の採用が鉄道存続の「唯一の方策」と4月に回答。5月には市議会の総合交通政策調査特別委員会も「鉄道として存続する場合の経営形態としては、公有民営方式を基本軸」と記載した中間報告書をまとめている。このことから近鉄は「(公有民営による鉄道の存続は)市民の皆様から一定のご理解を頂いている」としている。

公有民営方式は、鉄道施設の保有事業者と列車の運行事業者を分ける上下分離方式の一種。自治体などの公的機関が鉄道施設を保有し、これを民間企業などの運行事業者が無償で借り受けて列車を運行する。運行事業者が施設の保有、維持コストを負担する必要がないため、経営の改善に大きな効果があるとされる。

近鉄は内部・八王子線を公有民営方式に移行する場合、用地や施設の一部無償譲渡を含め「最大限の配慮」を行うとし、今後も同市との協議を重ねていく方針だ。

《草町義和》

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