後輪駆動で、背が高くて室内が広く、斬新なインパネを持つなど、先代『エルグランド』のあの雰囲気が好きだった筆者にとって、新しいエルグランドを最初に目にしたときは、実のところちょっと“残念”という印象のほうが大きかった。
ライバル車のような2列目のロングスライド機構など目玉となる装備もない。しかし、実車に触れて開発陣の話を聞くにつけ、こうなる必然があったことや、このほうがメリットは多いことが理解できた。
いろいろ新しいことにもチャレンジしており、8年間待たされる間に煮詰められた商品コンセプトは、つまるところ人を乗せるクルマとしての本質的な部分を磨き上げることにたどりついたようだ。
そして興味は4気筒になった2.5リッター車がどんなものかに移るわけだが、これで十分という気もするものの、やはり3.5リッターに乗り比べるといろんな部分が物足りない。
まず、どうしても音質が好みではない。そして、2.5リッターも低速トルクは十分あるのだが、全体的にCVTの変速の設定が燃費重視で、ちょっと変速比が動きすぎるきらいがある。
鼻先の軽いハンドリングを好む人もいるだろうが、そのぶん重厚感は薄れる。筆者がオススメするのは圧倒的に3.5リッター車だ。
せっかくエルグランドを選ぼうかという人にとって、実はそれほど大差ない維持費の違いを気にするほうがもったいないのでは?
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年富山県滑川市生まれ。学習院大学卒業後、生来のクルマ好きが高じて自動車メディアの世界へ。自動車情報ビデオマガジンの編集部員、自動車専門誌の記者を経てフリーランスへ。「クルマ好きのプロ」として、ユーザー目線に立った視点と幅広い守備範囲を自負し、近年はWEB媒体を中心に活動中。レスポンス試乗記には、他媒体では諸事情により書きにくい本音も吐露!?