先進のICT技術やテレマティクスを駆使し、中国で成長し続ける次世代の「トヨタ方式」。その可能性と今後の戦略について、キーパーソンである広汽トヨタ総経理助理・トヨタ自動車 e-TOYOTA部主査の友山茂...
【ATTT09】“視える化”がビジネスを変革する…広汽トヨタ総経理助理 友山茂樹氏
国際自動車通信技術展(ATTT)セミナーの基調講演一番手で登場したのは、広汽トヨタ総経理助理(社長代理)の友山茂樹氏。友山氏はe-Toyota部の主査を務め、トヨタの子会社であるICTシステム会社 トヨタメディアサービスの社長も兼務する。
講演のタイトルは「ICTで変わる自動車ビジネス “中国発、自動車流通革命”」。友山氏は、冒頭にG-BOOKの利用者数の推移について紹介。09年の9月末で130万を突破し、2年半で80万台増加した。
通信モジュールDCMを搭載したG-BOOKは日本のみならず海外にも展開しており、中国では09年3月にレクサス『RX』、ついで6月には『カムリ』の最上位グレードに搭載した。また北米でも8月に『レクサスインフォーム』という名称でG-BOOK相当のサービスをリリースした。
◆ICT化が自動車流通に構造的な変化をもたらす
友山氏は、ICT化によって自動車流通が構造的な変化をもたらしていることを指摘。「(自動車流通は)メーカー基軸から販売店基軸にシフトしつつあり、テレマティクスの占める位置はおきくなっている。そしてこのような変化は中国をはじめとする新興地域から始まっている」(友山氏)。生産から販売、そしてアフターフォローまでに至一貫したICT化の実例として、広汽トヨタで運用している『e-CRB』と『SLIM』を紹介した。
e-CRB(evolutionally Customer Relationship Building)は「商談から販売、アフターサービスに至る全てのプロセルにおいて販売店の業務を標準化し、ICTにより統合的に管理する」(友山氏)、ディーラーオペレーション・顧客管理システム。このICTによる標準化への取組みを、生産・物流にまで押し広げたものがSLIM(Sales Logistics Integrated Managemant:販売物流統合管理だ。
友山氏は「生産計画から納車までの全プロセスにおける1台1台のステータスがSLIMによってすべて視える化された。幅4m、高さ2m、6500万ピクセルの巨大モニターで瞬時に把握できる」と説明。どの販売店のどの仕様のクルマがその生産・流通過程にあるかが可視化され、長期在庫や配車の遅れなど、異常状態にある車両は車両アイコンの背景が赤くアラート表示される。
SLIMの導入によって大きな変化がもたらされたのは、市場変化への追従性だ。需給販売計画を担うアロケーターは、絶え間なく変動する販売や在庫をSLIMで把握し、リアルタイムに生産・販売計画を修正することが可能になる。「重要なのは“量と鮮度”。長期在庫を減らし、在庫をコントロールすることで、販売を最大化し、在庫を最少化できる」(友山氏)。
またSLIMは、経営のスピードアップにも貢献しているという。1台単位でステータスが可視化されたことで、これまで見過ごされがちだった過剰在庫が可視化されることで「担当者は嘘がつけなくなった」(友山氏)。SLIMモニターの前では毎週役員会議が行われ、即座に指示が出される。
◆ITCからVICTへ
友山氏は、ICTを活用して“視える化”すること、すなわちVICT(Visualized ICT)にこそにビジネス変革の可能性があることを強調する。「異常、つまり基準から外れたものの存在がわかることがまず重要。異常の存在を把握できれば、ただちに改善の方策を取ることができる」(友山氏)。
e-CRB、SLIM導入の効果は明白だ。長期在庫は圧縮され、生産・入金・配車までのリードタイムも大幅に短縮された。総在庫数はピーク時の1/3に減少、ラストオーダーから入金(広汽トヨタ←販売店)までのリードタイムも14日短縮、支払い(販売店→広汽トヨタ)から販売までのリードタイムも20日改善したという。メーカー/販売店双方の経営の効率化にもつながる。
◆「売ることが次のビジネスの出発点になる」
こうしたメーカー/販社間の生産・流通過程にプラスして、納車のアフターフォローにより買い換えあるいは買い増し需要を掘り起こす役目を持つのがG-BOOKに代表されるテレマティクスだ。中国のG-BOOK搭載車は、走行距離や警告灯の表示を随時モニターし、メーカー/販社で共有。e-CRBのCRMシステム「i-CROP」により適切なタイミングで販社から点検入庫をプッシュで誘致する。コールセンターからオーナーへの電話連絡では、その場で点検/修理の予約が可能。入庫予約を働きかけるのは、ストール(作業場)を効率的に運用することも狙いだ。
中国レクサスでは3月から、広汽トヨタでは6月よりG-BOOKの展開を始めたが、オーナーからの反響は日本以上。とくに1台あたりのオペレーターサービス月間利用平均回数は隔月10-12回で推移し、日本に比べて10倍以上。オペレータサービスへの改善要望も多数寄せられているという。
最後に友山氏はテレマティクスによる自動車販売の変化についても言及。「これまでの自動車ビジネスは、上流(メーカー)から下流(販売店およびユーザー)に一方向的に流れるメーカー主導型の直列構造だった。しかし、これからの自動車ビジネスは高度なICT基盤で結びつけられた販売店/メーカーがユーザーにトータルなサービスを提供していく」。
さらに、「クルマは“サービスを提供する商品”である」と位置づけ、「クルマを売って終わりではない。クルマを造り、そして売ることがビジネスの出発点になる。サービスを利用するために必要なコスト負担は、販売店あるいはユーザーだけがになるのではなく、ユーザーもメーカーも販売店もコストを負担し、恩恵も受けるという構造になるだろう」と述べて、講演をしめくくった。
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