コモンレールに進出する重工
三菱重工業と三菱自動車工業の次世代環境技術をめぐる連携が強化されている。筆頭株主であり、持分法適用会社でもある自動車の経営支援に重工の技術力を投入するとともに、重工の自動車ビジネス拡大も狙うという一挙両得の事業戦略だ。
三菱自動車は1月のデトロイトモーターショーで、世界で最も厳しい米国の排ガス規制「Tier II Bin5」に適合するディーゼルエンジン搭載の『ランサー』を2010年に投入する計画を発表した。ショーでこの方針を表明したのは、自動車と重工の会長を兼務する西岡喬氏だった。
重工は次世代クリーンディーゼルのかなめであるピエゾ式のコモンレール燃料噴射装置を自社開発しており、次世代ディーゼルに対する同社の技術力をアピールする狙いがにじむ。コモンレールは現在、独ボッシュ、デンソー、米デルファイの3社による寡占となっており、三菱重工はこの成長市場に打って出る。
◆2010年にはリチウムイオン電池も
ディーゼルには欠かせないターボチャージャーで重工は、すでに世界3位、国内トップの地位を確保している。三菱車に搭載する次世代ディーゼルではタービン流量とコンプレッサー流量をそれぞれ可変する新鋭ターボを採用する計画だ。コモンレールやターボというユニットだけでなくエンジンコンポーネンツとしても、大きな市場が広がる欧州を狙う。
一方、EV(電気自動車)やハイブリッド、燃料電池車の性能を決める次世代2次バッテリーのリチウムイオン電池についても、三菱重工は2010年ごろの製品化を目指している。三菱自動車が開発中のインホイールモーターによる電気自動車システム「MIEV」などへの搭載のほか、世界の自動車メーカーに供給し、自動車関連事業の新たな柱に育成する構えだ。
◆ダイムラーとの提携解消は結果オーライ?
両社は1990年代末から燃料電池の共同開発も進めている。ハイブリッドについては他社からの技術導入という選択肢が妥当かもしれないが、次世代環境技術全般を見れば、2人3脚で何とか先行企業に遅れを取らない展望が開けつつある。
ダイムラークライスラーがクライスラー部門の切り離しに動いていることを考えれば、三菱2社にとって2004年の時点でダイムラーとの提携が解消されたのは、こと環境技術に関しては結果オーライだったかもしれない。この3年間にいたずらに時間を浪費せず、技術開発方針を明確にすることができたからだ。