---- 翻って日本の市場を見てみますと、自動車販売はこれまでにないほどに落ち込んでいます。この状況は単なるガソリン高騰や若者の関心低下といった表層的なものではなく、もっと構造的な変化であるということでしょうか。
友山 そうですね。ビジネスの在り方そのものが変化してきているのだと思います。これまでの自動車ビジネスは、クルマをひとつの「モノや製品」として見る傾向が強かった。ですが、これから我々が売るものはもっと違う商品やサービスになっていくのではないでしょうか。
---- 別業種の例ですが、スターバックスは空間とサービスを売り、そこにお客様を繋ぎとめることで新たなビジネスを生みだしています。例えば、レコードレーベルを立ち上げたり、アップルと提携して音楽配信ビジネスに乗り出している。お客様との関係そのものが価値であり、ビジネスの土壌であるという考え方ですね。
友山 それを自動車メーカーの事業であてはめると、単純に「新車が売れない」とか、「クルマの買い換えサイクルが10年を超えた」というのは必ずしも悲観材料ではないと思います。例えば、トヨタ車に10年以上お乗りいただき、買い換えをされないお客様がいたとする。これを「長期にわたりお客様との関係性がある」と見て、その上でどのような価値を提供し、新たなビジネスモデルを構築していくか、ということを考える時期にあるのです。
安全や環境のことを考えれば、自動車メーカーは「安心して長く乗れるクルマ」を作らなければならない。その結果、買い換えサイクルはさらに長期化するでしょう。わたしたちは、この新たな時代に対応したビジネスモデルを考える必要があるのです。
---- 自動車ビジネスの根幹は「モビリティを売る」ところにありますが、そのコンテキスト(文脈)がずいぶんと変わってきそうですね。
友山 これまではクルマというモノを通じて移動手段を売ってきたわけですけれど、これからはクルマの利用やサービスを売るという方向性に変化していくでしょう。安全・快適・便利に移動できる“サービスを売る”。この潮流は地域差や程度の違いはあるでしょうが、世界的に広がると考えています。中国へのテレマティクス展開は、その第一歩だということなのです。
---- 本日はどうもありがとうございました。
《インタビュアー:神尾寿(通信・ITSジャーナリスト)》
|
 |
 |
 |

 |
 |
 |
 |

1958年生まれ。1981年群馬大学工学部卒業。1981年トヨタ自動車入社。以降、第三生産技術部、FAシステム部、生産調査部、国内企画部業務改善支援室を経て、1999年国内業務部業務改善支援室室長。2000年GAZOO事業部部長、ショッピングサイト『GAZOO』を立ち上げる。2002年e-TOYOTA部部長。トヨタの第二世代テレマティクス『G-BOOK』を立ち上げる。2003年トヨタモーターアジアパシフィック株式会社に出向。2004年帰任しトヨタ自動車e-TOYOTA部部長に復帰。2008年1月には広州トヨタ有限公司に出向、社長補佐にあたる総経理助理の任に着きながら、e-TOYOTA部の主査、そしてGAZOOやG-BOOKを運営するトヨタメディアサービス株式会社の代表取締役社長も兼任している。
|
|
 |
 |
 |

 |

通信・ITSジャーナリスト。IT雑誌契約ライターを経て、大手携帯電話会社の業務委託でデータ通信ビジネスのコンサルティングを行う。1999年にジャーナリストとして独立。通信分野全般に通じ、移動体通信とITSを中核に通信が関わる分野全般を、インフラからハードウェア、コンテンツ、ユーザーのニーズとカルチャーまでクロスオーバーで見ている。レスポンス特約記者およびレスポンスビジネスユニットの客員研究員も努める。記事執筆先は、レスポンスのほか、朝日新聞社、日経BP社、世界文化社、徳間書店などの専門誌および一般誌。著書は『自動車ITS革命』など。その他講演多数。
|
 |
|
 |
|
 |
【中国取材特集】テレマティクスで完成する、新トヨタ販売方程式
|
 |