---- 中国における「e-CRB」のシステムはとても先進的なものですが、これはどのような経緯で導入されたのでしょうか。
友山 ディーラー
の顧客対応の仕組みを『視える化』し、顧客満足度を向上するとともに効率化を図るという取り組みは、日本では'90年代後半から行っていました。例えば、
お客様ごとにDM(ダイレクトメール)発送のタイミングをずらすという対応は、日本では発送順序ごとに仕切られたポストを使うなど、(アナログな手法で)
実現していたのです。
その後、トヨタが本格的にアジア展開をすることになり、これらきめ細かな顧客対応のノウハウも(アジア各国で)展開しようとしたのですが、国民性
の違いもあってアナログな手法だとなかなか根付きませんでした。そこでIT技術を使ってシステム化することにしまして、その第一弾として2003年、タイ
にe-CRBを構築しました。
---- まずタイで導入し、その次が中国市場だったわけですね。
友山 ええ。2005年8月にモデル店2店舗で導入し、その後、2005年度中に全店舗展開をしました。
---- かなり速い展開スピードですね。
友山 中国は
ディーラーの歴史が浅いからできたのですよ。また、中国人はこういったシステム化・効率化に受容性が高く、ITへの抵抗感も少ない。従業員も含めてそうな
のですが、自動車産業そのものがとても若くてアグレッシブなんです。また、1企業1店舗という体制なので、(社長である)総経理の目配りが行き届いている
ところも特徴ですね。
---- 歴史の浅さが、むしろ新しいシステムの展開には有利に働いた、と。
友山 そうだと
思っています。例えば、タイではe-CRBの全店展開ができていません。その原因となっているのが、自動車ディーラーを長くやっている企業が多く、彼らの
やり方がすでに構築されてしまっていることなんです。また1社が複数の店舗を持っていて、販売方法やノウハウが、ディーラーごとに独自のものとして存在す
る。このあたりは日本の自動車ディーラー網にも通じるのですが、すでにディーラーごとの販売手法やシステムができあがってしまっているところに、新しくe
-CRBを導入・展開しようとしても難しいですよね。
---- e-CRBは今後、日本や北米市場でも展開していくのでしょうか。
友山 日本でも一部着手し始めているのですけれど、全国展開というと時間がかかるでしょうね。北米も同様だと思います。
e-CRBは長期的に展開していくところと、一気呵成に展開するところの2種類があると考えています。特にBRICs市場は中国で成功したわけで
すから、次はインドやロシア、ブラジルでの展開も考えられるわけです。むろん、これらすべての国でテレマティクスの段階までサービスを拡大するかはわかり
ませんが(笑)
---- 中国市場でのe-CRBは、今まさにモータリゼーションが進行している新興国市場への将来展開においても、布石である。
友山 中国市場で
e-CRBを始めたばかりの時はそこまで考えていなかったのですけれどね(笑)。ただ、日本と北米市場が数量的に飽和する中で、中国市場での販売台数が一
気に伸びてきている。さらに(e-CRBや今後のテレマティクスに必要な)通信インフラの整備も急速に進んでいます。ですから、この成長著しい市場で、e
-CRBやテレマティクスに早くから着手できたのは、我々にとって幸運だったと思いますよ。
《インタビュアー:神尾寿(通信・ITSジャーナリスト)》
|