取材特集 中国 トヨタのテレマティクスはe-CRBで完成する
中国におけるトヨタのテレマティクスサービスは、日本のようなカーナビ機能拡張サービスではない。CRMをサービスとして顧客にメリットを伝え、さらに上位のCRMサービスを提供すべくテレマティクスを開始する。これがトヨタの中国市場攻略の重要な骨格となっている。

トヨタ自動車は2007年10月に北京で行われたITS世界会議で、2009年初頭より中国でテレマティクスサービスを開始すると発表した。中国でのテレマティクスは日本でのG-BOOKやG-Linkサービスと同様に、DCMと呼ばれるCDMA2000による車載通信機利用して行う。

「最初の導入は上級グレードから」(トヨタ自動車・中国投資公司磯貝匡志総経理)としているように、2009年最初に投入されるのはレクサスの新型車になる見通しだ。
主なサービスは6つ。
1.DCMの利点を生かした盗難車追跡サービス
2.日本ではヘルプネットに当たる緊急通報サービス
3.全ディーラーに導入されるサービスプラットフォームと連動して車検の案内や故障時の入庫をスケジュールするCRMサービス
4.天気やニュース読み上げなどのインフォメーションサービス
5.ハンズフリー通話で話すオペレーターに目的地の検索やナビの設定を遠隔で代わってやってくれるオペレーターサポートサービス
6.タクシープローブを利用した交通情報を独自の解析処理で数時間後の渋滞予測をする交通情報サービス
以上を予定している。これはトヨタが考える中国市場でのアピール度の順である。

トヨタが日本で行っているテレマティクスサービスと比較する上で注目したいのは2点。ひとつは6番目に位置する交通情報提供について。日本で2007年から開始している『G-BOOK mX』ユーザー間によるプローブ渋滞情報共有方式ではなく、中国では都市部(北京では約6万台)のタクシープローブを利用した交通情報を利用していることが違いだ。

そして3番目に重要と考えるCRMサービス。中国でトヨタが全ディーラーに展開する『e-CRB(Customer Relationship Building)』とテレマティクスは、お互いに連携しあうことで、高度なCRMサービスを提供できるというものだ。

記者会見では「すでに中国国内の広州トヨタ系列ディーラーおよびレクサス店には全店e-CRBシステムを導入済みであり、一汽トヨタ系列ディーラーに対しても2009年のサービス開始までに導入を終える」(トヨタ自動車・中国投資公司磯貝匡志総経理)として、テレマティクスサービスを中国で行なう目的のひとつに、ディーラーと顧客、メーカーとのよりよい関係づくりがあることを強調している。

この磯貝総経理のコメントは、中国人記者の「e-CRBは一汽トヨタ系列ディーラーにはまだ完全に導入されていないはずだが?」という問いに対して発せられたものであり、記者のみならず『e-CRB』は中国トヨタが一般消費者に対してアピールするトヨタ独自のサービスとして、マーケティングにも利用されているのだ。

お分かりいただけただろうか。

つづくレポートでは、レクサス店および広州トヨタ店での取材を通じて、販売における21世紀型トヨタ方式ともいえる姿を浮き彫りにしてゆきたい。
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