――三菱車のブランド力の再構築やブランドイメージの訴求に、今後どのように取り組みますか。
益子 当社で知名度やイメージが高いのは『パジェロ』や『ランサーエボリューション』だと思います。パリダカや一時休止したWRCへの挑戦による成果をフィードバックして技術を確立してきました。WRCにはいずれ復帰します。こうした大切なブランドは守って行きます。『ランサー』は日本ではしっかりした3BOXのクルマとして位置づけたい。また、『ギャラン』は米国を生産拠点にしますが、やがて日本にももってきます。
パジェロなどはハードなイメージを代表していますが、『i』のように個性的で暖かいソフトなイメージも追及していく。性能面では「環境・安全・燃費」をキーワードに、チャレンジしていくことです。そのひとつが開発中の電気自動車であり、当社の将来のブランドを担う存在に育成したい。当面はリチウムイオン電池とインホイールモーターで開発を進めますが、将来はハイブリッド車にもこの技術の展開は可能です。電気自動車としては、できれば今年中にも i ベースのモニターカーを特定のお客様に使っていただけるようにしたいと考えています。
――ダイムラーとの提携時代はオリビエ・ブーレイ氏がデザインを担当しました。デザイン戦略はどう修正しますか。
益子 ダイムラーのようにブランドイメージが確立しているところは、仮にデザインがやや劣っても、ブランド力でカバーできるということはあると思います。今や資本提携も完全になくなったわけですから、三菱らしさを自由に出せる環境になりました。商品ラインもデザインも三菱らしさを打ち出して行きます。昨年9月からコミュニケーションワードを社内公募による「クルマづくりの原点へ。」と変更したのも、三菱らしさを大切にしたいという思いからです。開発、モノづくり、そして販売の「現場」という意味での原点。走る、曲がる、止まるというクルマの基本性能の原点へということです。
――ITSなどクルマを進化させる技術への取り組みについてはいかがですか。
益子 ユーザーインターフェースへのITおよびITSの活用は、環境・安全・燃費という技術課題をこなすうえでも非常に重要な要素です。当社も国土交通省と推進する実験安全車(ASV)の第3期プロジェクトとして『グランディスASV-3』などを開発しました。ITSの活用とクルマそのものの進歩により、ぶつからない技術が理想ですが、ぶつかっても乗員のダメージを最小にする、人命は守るという技術の進化に力を入れて取り組んでいます。
インタビュアー:池原照雄(経済ジャーナリスト)
写真:竹内征二
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