フミア) デザイン哲学再考の出発点となった「日本独創」とは、どういうものだとお考えになりましたか。よく知られている日本の伝統的な文化や、現代の日本メーカー独自の技術では、ロータリーエンジンとか、水平対向エンジンとか、トヨタのハイブリッド技術があります。
平井) ええ。古い日本=「Jオリジン」と、新しい日本=「Jテック」との間に共通の流れがあります。その奥にあるものが「日本独創」ではないかと。
たとえば円と正方形、ふたつの形があって、それらが妥協も対立もせず調和するのが「Jファクター」だと思います。円と正方形を並べるのが「対立」、角を丸めた「八角形」は妥協です。重ね合わせた、円であり正方形でもあるのが調和です。
「L-finesse」のLは「Leading edge」=先鋭、finesseは人間の感性や巧みの技の精妙を意味します。ハイブリッド技術はエコロジーとエモーションの調和ですね。初代『プリウス』はレクサスでなくトヨタですが、こういった調和をデザインで表現できないかと努力しました。
フミア) そう、ブランドを造形で表現することは大事です。1955年のシトロエン『DS』は革新性を目に訴えてきました。
平井) 私はDSを6歳のとき写真で見て衝撃を受けました。そしてもう1台印象的なのが1957年の、ピニンファリーナがデザインしたランチア『フロリダ』。これは完璧なハーモニーを表現していました。
フミア) 調和というと「みんなで楽しむ」という考え方があります。みんなと良好な関係を築くことを重視する。ただヨーロッパから見ると日本のメーカーは競争をしていないように見えるんですよ。引き分け狙いのサッカーみたいな(笑)。
デザインでは「調和」を哲学としながらもレクサスは国際競争に飛び込むのですね。
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初代プリウス |
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シトロエンDS |
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シトロエンDS(イギリスで開催された50周年イベント) |
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レクサス日本展開 |
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