――8月末からいよいよ「レクサス」が始動します。
渡辺 個人的には夢のクルマ実現の先兵という位置づけです。高級の本質と言っていますが、最高のものを作って、最高の販売・サービスをするということは、今までの軸と違うところにもって行くわけですから、夢のクルマの実現ということもレクサスであると、私自身は思っています。安全にも環境にも優れていることが、これからの「高級」を意味することになると考えます。
――日本市場では高級欧州車は強いですね。ある程度、欧州車を食えますか。
渡辺 私は食えると思っています。チャレンジではありますが・・・。トヨタブランドにとっても、新たなベンチマークをつくることができる。開発、生産、販売とあらゆるところに波及させることができるし、そうしなければなりません。
――先ほど「CCC21」の話がでました。3年間で1兆円の成果を上げたと過去形で表現されますが、実際には今年の『ヴィッツ』や来年の『カローラ』『カムリ』のモデルチェンジで膨大な効果が出るようですね。
渡辺 まったくその通りですね。改善された部品はモデルチェンジの時に投入されるので、(効果の)面積から言ったら、世界戦略車の方が大きい。それでも改善に限りはないので、CCC21でやったことを、さらに改善しようとやっています。
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――VI(バリュー・イノベーション)という新たな取り組みですね。
渡辺 VIは、調達の手前の「設計」を良くしてほしいという取り組みです。設計が良ければ、作り方ももっと楽だということです。それから部分最適から全体最適ということをよく言っています。たとえば2つの部品を組み合わせる場合、一方の部品のコストが高ければ安い方に合わせた仕様にできないか。あるいは2つセットで変えようか、さらにこの部品は本当に必要なのかといった具合に、知恵はいっぱい出る。そういう発想でやったら改善に限りはないなと。
――CCC21では組織の壁を破るように横断的にやったのですが、VIではもっと上流からということでしょうか。
渡辺 材料も含めて設計のありようをもう一度見直すことです。いいモノづくりは設計からですから、作りのことも考えた設計になっているのかということ。上流に遡れと言っています。SE、つまりサイマルテニアス・エンジニアリングです。製造のSE、生産設備のSE、そして設計そのものもやって材料まで遡るわけです。原点に立ち返ってやるとどうことになるのか。
たとえば、ボディーにレインフォースメント(補強材)を付けるが、あれは私から見れば下手設計だと思います。設計の段階からレインフォースメントが要らないような設計をすべきと、これは事務屋的発想かもしれませんが、そういうことをもっと原点に返ってやろうと。
生産でも、たとえば車体プレスのストロークは、単位時間当たり何回打てるという理論値まで行っていない。段取り替えや加工品の搬送などがあって理論値まで行かないのだが、ある意味、聖域を超えて理論値まで近づく努力が必要です。それがプレスの常識ですということになるなら、その常識は「ペケ」ですよと。そういう改善のテーマが、まだいっぱいあります。そういう考えを全世界に発信していきたいですね。「もと・まちこうば」の時からずっと続けてきたことです。
インタビュアー:池原照雄(経済ジャーナリスト)
写真:竹内征二
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