G-BOOKはオープン 最良の技術とコンテンツが集う

――カーテレマティクスへの期待の高まりのなか、日産自動車はすでにこの春から『カーウイングス』をスタートさせていますね。

豊田 これまでのような携帯電話をつなげるスタイルのものは機能的には第一世代といえるものだと思います。当社は『モネ(MONET)』でそれを経験していますが、G-BOOKは、それらを超える第二世代のカーテレマティクスと位置づけています。

――G-BOOKの大きな進化点は、通信モジュールの内蔵と、通信コスト(電話代)を意識しなくてもいいというビジネスモデルだと思いますが。

豊田 それらは大きな特徴です。それと、もうひとつの大きな特徴は自動車メーカーが作ったという点です。

――情報通信機器メーカーが作ったものとの違いはどこですか。

豊田 クルマの中では、ドライバーの両手はハンドルを握り、目は安全確認を行い、足はブレーキとアクセルを踏むので、歩いて携帯電話を使っているときとは、状態がまるで違います。自動車メーカーは長年にわたり、クルマ空間にいる人をより快適に、より安全にするためのノウハウを研究してきました。運転席に座った状態で使いやすい設計は自動車メーカーの得意分野です。ですから、逆にドアを開けて外に出たあとは、自動車メーカーがやるべきものではなく、携帯電話やPDAにまかせればいいと思います。

――G-BOOKの場合、クルマは次の代替までの6〜7年間乗ることを念頭に置いて、車載機をプリミティブなものに絞ってソフトウェアの進化とサーバー側の進化で対応する仕組みを選ばれたと聞いています。しかし、今後、通信速度は段階を経て速くなると思いますし、それに伴ってリッチなコンテンツをハンドリングする必要が生じ、CPUの負荷も高くなります。3年先、5年先のハードウェアアップグレードのサービスを示すことは、“つながる”クルマを買いやすくなる環境づくりになると思いますが。

豊田 ハードウェアがアップグレードして情報量がこんなに多くなりますよ、ということはあると思いますが、クルマ空間という限定された中で、必要なスピードで、必要な情報量はどれぐらいが適当なのかを考慮したうえで、現在のスペックで7年間はもつだろうと判断しています。ハードウェアの進化は、携帯電話やPDA、自宅のインターネット端末で対応してもらえればいいと思っています。

――トヨタがIDO(日本高速移動通信)から始まって、現在のKDDIに資本参加したのは、カーテレマティクス時代を視野に入れてのことですか。

豊田 トヨタの中には、そういうことを考えた人はいると思いますが、私個人はそういうことは考えていませんでした。カーテレマティクスという言葉すら知らなかった(笑)。

――ということは、今回のG-BOOKはトヨタが資本参加しているからKDDIの通信を使う、というわけではなかったと。

豊田 KDDIが技術的にいちばん優れていたと聞いています。クルマに通信モジュールを内蔵するにあたって、トンネルの中でも切れにくいだとか、高速道路上でもつながりやすいとか、カーラジオ感覚で、タッチパネルで情報が取れるとか、トヨタが望んだ機能を実現する技術をKDDIが持っていたということです。G-BOOKはお客様に軸を置いているので、アライアンスはオープンに考えています。今後KDDIだけにこだわらず、いい技術は幅広く迎えたいと思っています。

――オープンといえば、G-BOOKはWindowsテクノロジーを使っており、オープンなインターネット接続ができるはずなのに、あえてそれをしなかったのはなぜですか。iモードの普及は勝手サイトと呼ばれる個人サイトの力も大きかったと思います。パーキングブレーキを使用している最中であれば、安全面でも問題はないのでは?

豊田 ドライバーの安全だけでなく、Webを公開するとウィルスなどからの危険にもさらされることになります。今後の使用実態をみながら検討していくつもりです。

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