――"奥田ビジョン"を実現するための具体策としてはどういうものがありますか。
奥田 5月28日の(日本経団連の)総会で示した、新規事業と雇用機会の創造、地球環境問題への対応、政治と経済界の新たな関係などの総会議決事項は入ってくると思う。
――このビジョンを実現するには国民世論の支持が必要ですね。今までの財界団体は国民からすれば"雲の上の存在"で、政界の補完物としてしか映っていなかった。奥田さんには、日本経団連を国民に関心が持たれる団体に変えてくれる、という期待があります。
奥田 年寄りクラブを変えろというの?(笑) それはともかく、日本の財界はやっぱり「日本の国民がいかに幸せに生きていけるか」ということに力を尽くさなければダメ。財界は国民が幸せになれるために存在している。政治とか経済はテクニックだと思う。政治とか経済の目的は国民の幸せを実現すること。政治や経済が本来の目的を忘れてしまったから、日本が間違った方向に進んでしまったんじゃないかな。
――政界との関係はどうあるべきだと考えますか。
奥田 かつては、カネ(政治献金)と票を通じて政と官に影響力を行使できた。今は提言がなかなか実現しない。とはいっても、財界が提言したことを実現することがリーダーに求められていると思うので努力はする。その上で政治献金をどうするかについてはいま考えている。政界と財界は、あるときはぶつかるし、あるときは協議する。"競争と協調"の関係であるべきだと思う。言いたいことを隠して政界の意のままにはならないし、財界として言うべきことはガンガン言う。政治がいいことをやるなら、それをバックアップする。そういう関係が望ましい。
――日本経団連が提言を実現するために、政治献金の斡旋を復活させるのですか。
奥田 政治献金の議論は、今は政治とカネにまつわる関係が問題になっているので、タイミング的にはまだ避けたほうがいい。もうちょっと落ち着いてからとらえたほうがいいと思っている。私個人的には、前から言っているように、政治資金は個人献金と政党助成金のふたつでまかなうべきだと考えている。そのふたつでは足りない分を、企業献金で補っている。寄付金に対する税制を整備すれば、個人献金は増えるだろう。
――いくら税制を変えても、日本では個人献金は定着しない、との指摘もあります。企業献金の必要性はなくならないというわけです。個別企業や業界団体からの献金を一切やめて、日本経団連からの献金のみにするというのはどうでしょうか。
奥田 それもひとつの方法だろうね。自民党、民主党という政党ではなく、政界の環境派グループにとか、機能別に分けて献金する方法も考えられる。
選択肢はいろいろあります。
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