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●日産に軽自動車をOEMする?

―― 先頃もトヨタ自動車とアメリカのフォードが環境技術をはじめ、いくつかの分野で提携関係を結ぶことが報じられました。自動車業界では相変わらず、生き残りを賭けた動きが活発ですね。トヨタとフォードの提携が報じられた日には、日産自動車がスズキから軽自動車のOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けるとの記事も出ました。真偽のほどはどうなんですか。

戸田 ああ、あれね。最近、日産さんから話があったことは事実です。でもね、ウチと日産さんがこの件で土俵にあがって話し合うかどうかもまだまったく決まっていない。しかも、日産さんはウチ以外にもコンタクトしている。

―― 日産は三菱自動車にも話をもっていっていますね。

戸田 そうですね。だから、この話はいまの時点ではどうなるかわからない。記事にする段階じゃないですよ。

―― 日産は軽自動車を自前でやることも考えているようですしね。

戸田 それもあるでしょうね。ウチだってマツダさんに(軽自動車をOEM)供給していますし、資本提携しているGM(ゼネラル・モーターズ)との関係もありますから、そこのところを調整しなければいけません。

―― スズキが日産に軽自動車をOEM供給することになると、スズキの軽自動車を販売している業販店の理解を得ることも必要になりますね。日産の販売会社と競合することになるわけですから。

戸田 そのとおりです。この話が報じられただけで、業販店を中心にウチの国内営業に「あの話は本当か? 本当だったら大変だ」と、かなりの数の電話があったぐらいですからね。ですから、日産さんとの話は、ウチとしてもクリアしなければならない問題がいろいろあるわけです。この話は、ああそうですか、と簡単に決まることではないんです。

―― トヨタとフォードが業務提携することになり、トヨタの子会社であるダイハツ工業の軽自動車を、フォードが資本参加しているマツダに販売させるそうです。そうなると、マツダとしてはスズキから軽自動車をOEM供給してもらう必要がなくなる。だから、スズキは新たな供給先として日産を選ぶのではないか、という見方もあります。

戸田 フォードさんとトヨタさんの関係ですから、どうなるのかわかりませんが、マツダさんからはウチの軽自動車を供給していることについて何も話はきていませんし、ウチも従来どおりマツダさんとの関係を変えることは考えていません。

―― 昨年9月に、GMの持ち株比率が20%になり、スズキはGMグループの一員であるとの姿勢を鮮明に打ち出しましたね。狙いは自動車メーカーが生き残るための鍵となる環境技術やIT(情報技術)をGMから取り込もうということですか。

戸田 それはもうGMグループ入りした大きな要因ですね。環境技術やITについてはウチ独自でもやっていけないわけではない。だけど、燃料電池なんかは莫大な金がかかる。彼ら(GM)だって、(燃料電池の研究開発に)年間1000億円ぐらい使っているんじゃないかな。だから、ウチ独自ではとても無理ですよ。GMグループの一員になることで、燃料電池なんかはGMの力を借りることになりますね。

《写真=井手孝高》
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