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●小さなクルマづくりの技術を磨き抜く

―― 燃料電池以外にも、GMにはスズキが使える技術がたくさんあるんでしょうね。

戸田 ある、ある。ウチがすぐに商品開発に使えるもの、2〜3年先には使えるものなどたくさんありますね。(GMは)図体が大きいだけあって、技術部門のスケールも実に大きいですよ。

―― とはいえ、GMの技術をスズキに採り入れるといっても、そっくりそのまま使えるわけではない?

戸田 うん、全然ダメ。それとね、ウチがいっぽう的に、その技術をくれといってもダメなんですよ。例えば、向こう(GM)が手掛けているのは大きいピストンばかり。逆にウチが小さいピストンだけ。そうすると、向こうでやっている燃焼のシミュレーションを、ウチに当てはめても同じ結果は出ないんです。そこでウチの若い技術屋をふたりぐらいGMに行かせて、いっしょに燃焼のシミュレーションをやらせる。いっしょにやっているちに、シミュレーションの結果が同じになってくる。するとGMの研究者も、自分たちの技術が小さいものに使えないことがわかり、同時に小さいものに対する興味をもってくれます。つまり、ギブ・アンド・テイクの関係にならないと、GMの技術をもらうといっても、そう簡単じゃないわけです。



―― GMの技術をスズキに採り入れるためにも、スズキが得意とする小さなクルマづくりの技術を、GMが興味をもつほど磨いていかないとダメということですね。

戸田 そうそう。スズキは小さなクルマづくりの技術があるわけです。ところが、ウチの若い技術屋がGMに行って、いろいろな技術を見てくると、必ずカッコいいといって、それをそのままスズキに採り入れようとする。でも、これは大きな間違い。あくまでも、スズキの小さなクルマづくりの技術に、GMの技術をうまく応用するという発想がなければダメです。GMが2年かかった技術をスズキに応用するとしたら、スズキは1年で応用できるようにするくらいの意識が大事だね。

―― 1981年にスズキがGMと資本提携したとき、企業規模から考えても、スズキはいずれGMに呑み込まれるのではないか、と思われていた。ところが実際は小(スズキ)が大(GM)を呑み込んだといわれるほど。スズキはGMをうまく活用してきましたね。小が大を飲み込む関係のベースには、スズキの小さなクルマづくりの技術があったわけだ。

戸田 ウチの場合は、そこ(小さなクルマづくりの技術)だけはしっかり押さえて、それを磨いて、磨いて、磨き抜いていかないとGMには通用しませんね。

―― ということは、スズキが小さなクルマづくりの技術をおろそかにするようになれば…。

戸田 危ないでしょうね。(スズキがGMに)呑み込まれてしまうでしょう。小さなクルマづくりの技術を磨くことと同時に、スズキがきちんとした経営をやって、利益を出していれば、GMには対等にものが言える関係が継続できます。

静岡大学工学部卒業後、58年、鈴木自動車工業株式会社入社。87年に4輪第2設計部長となる。87年取締役就任、89年常務取締役、91年専務取締役を経て、95年取締役副社長就任。2000年6月より、取締役社長として指揮をとり、現在に至る。
※90年スズキ株式会社に社名変更

経済誌編集長を経てフリー経済ジャーナリストへ。「週刊文春」「週刊現代」「週刊朝日」「プレジデント」などの雑誌や、「ニュースジャパン」(フジTV)で活躍。著書に「トヨタ創意くふう提案活動」「自動車大ビッグバン」などがある。
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