日産自動車は7月27日、2010年度に発売予定の新型EV(電気自動車)の試作車をマスコミ向けに公開、試乗会を開催した。その外観は市販モデルのコンパクトカー『ティーダ』だが、シャーシやパワートレインはすべて8月2日に公開されるという新型EVの「EV専用プラットフォーム」が使われている。
テストコースでこの新型EVの試作車を走らせてみたフィーリングだが、一口で言えば、きわめて一般的なEV。発進加速は電車のようにスムーズでトルク変動はほとんどない。パワートレインからのノイズはエンジン車に比べて非常に小さい。
ただし、パワートレインが静かなぶん、相対的にロードノイズや風切り音、インバーターなど電子部品からの高周波ノイズは耳に付く。ユーザーにとって静粛性は、エネルギーコストの安さと並ぶEVの大きな魅力である。遮音のレベルによっては走るオーディオルーム、走るシアタールームといった商品性も期待できるだけに、EVの特性が生かされるよう改善が望まれる。
動力性能は必要十分というレベルではあるが、新型EVと同格となる2リッタークラスのエンジン車をリードする力強さを感じさせるようなものではない。発進加速は低速トルクが強力という電気モーターの特性もあって軽快だが、80km/h以上の高速領域では少々非力。床下に300kgのバッテリーパックを抱え、車両総重量は1600kgに達するとのことで、ドライブフィールへの影響は決して小さくない。重量過大というEVの弱点解消に向け、今後のバッテリーの技術革新が待たれるところだ。
ちなみに今回試乗したEVはあくまで市販モデルとは異なる実験車両であり、10年度にデビューするという新型EVの実車は、とくに快適性、静粛性について大幅にレベルを上げてくることは容易に想像できる。クルマとしての出来の評価は、あくまでそのモデルで行うべきであろう。