事故の少ない高速道路
道路の交通安全対策と言えば、歩道やガードレール、カーブミラーなど交通安全施設を連想される方が多いと思う。高速道路は、交通安全対策とは関係なさそうにみえるが、その利用促進は有効な安全対策でもあるのだ。
高速道路は言うまでもなく自動車専用であり、交差点がなく中央分離帯で仕切られているなど、事故が発生しにくい構造をとっている。高速道路が一般道路より安全に運転できることは、多くのドライバーが体感していることだろう。
しかし、事故がどの程度少ないかご存知の方は少ないだろう。高速道路など「規格の高い道路」は日本の自動車交通の14%強を分担しているが、交通事故の発生件数比は1.5%に過ぎないなど事故や死傷者数は少なく、走行台kmあたりの事故件数にすると一般道路より一桁低くなる(図1、図2)。
◆低水準に留まる日本の高速道路利用率
両者の事故率に変化がなければ、高速道路の利用が進めば進むほど、交通事故や死傷者数は確実に減る。高速道路など「規格の高い道路」の利用率は、この10年間で少しアップしてはいるが、欧米主要国では2〜3割も利用されているのに較べると、依然として低水準にある(図3)。
日本の利用率が低いのは、整備延長の違いやインターチェンジ間隔が長いこともあるが、そもそも有料道路が多く、料金も欧米の2 - 3倍と高いことが最大の要因だろう。
◆利用率アップによる事故低減効果の推定
「規格の高い道路」の利用率アップによる事故抑止効果を大まかに推定してみよう。事故率や事故件数の総数は06年実績値のまま、利用率のみをアップさせ交通事故の減少効果を推定すると、利用率1ポイントあたり交通事故を1万件弱減らせる計算になる(図4)。
高速道路は、一部の都市を除けば目一杯使われているわけでもないので、まだ利用率アップの余地がある。利用率を上げるには、高速道路の料金の引下げやインターチェンジの増設、また幹線国道を立体交差化して規格を上げることも有効だろう。
高速道路の料金水準は、道路四公団民営化の際決まった「2050年までに高速道路の借金を返す」を基準に決められている。料金を下げるには、当面、税金を入れて道路会社の減収を帳消しにするしか手はなさそうだが、筆者はそれだけの価値はあると思う。