『レガシィ』に搭載され、3月のジュネーブショーデビューが予定されている、「スバル ボクサーディーゼル」ユニット。前述したように、水平対向の乗用車用ディーゼルエンジンとしては世界初だ。
水平対向エンジンは、対になっている左右のピストンが対称な運動をするため、互いの爆発振動を打ち消す特性があり、直4やV6ディーゼルには必須の、振動を打ち消すためのバランスシャフトは不要だ。このことだけでも、従来のパワーユニットからして、かなりフリクション(抵抗)を軽減することができるのだ。
また、クランクシャフトを左右のシリンダーブロックが挟み込むように設計されているので、クランクケースの剛性がもともと強く、16.3:1という高い圧縮比から発生する強烈な爆発トルクに対して(最大トルクは350Nm/1800rpm)大きな補強を必要としない。これによりアルミ合金製のシリンダーブロックを採用して軽量化を狙っている。
また、ロングストローク化することでエンジンブロックの全長を4気筒ガソリンエンジンよりも61.3mm短縮してコンパクト化している。これによってクランクシャフトも短くなり、クランクの剛性も上がるという一石二鳥を達成しているのだ。
短くなると軽量となるが、シリンダーブロックのジャーナル部の強度を確保して、クランクシャフトまわりに必要な剛性や静粛性向上を実現している。これらの対策によるエンジン単体での重量増は約10kgに留めた。
さらに、ディーゼル化のための遮音対策や補助暖房システムの追加などで実際にはそれ以上の重量増となってしまうが、エンジンのオーバーハングが短くなったことで重心点がセンター寄りになり、そのことがスポーティなハンドリングを生み出している。
このエンジンの開発が始まったのは約3年前。これだけ短い期間で開発が進んだ裏には、水平対向エンジンがもともとディーゼルに向いていた、ということがいえるのではないだろうか。スバルの開発能力が侮れないレベルであることも事実だが、わずか3年でこれだけのものを作り上げたのだから、この先の展開にも期待感を抱きたくなるほどだ。