日野自動車は4月5日、中型トラック『レンジャー』を16年ぶりに全面改良し、発売した。チーフエンジニアを務める佐藤直樹氏は同日開いた発表会で「大型トラック『プロフィア』同等の安全装備をすべて標準装着とし、安全性を大幅に向上することができた」と強調した。
佐藤チーフエンジニアは「これまでは滑りやすい路面やカーブでの事故抑制に貢献するVSC(車両制御安定装置)を一部車型に標準設定していたが、日野は、安全装備は標準装着して普及を促進してこそ効果が高まると考えている」と語り、全面改良を機に大型車並みの安全装備を標準化した経緯を明かした。
このうち停止車両や歩行者も検知して衝突の回避を支援することができるPCS(衝突被害軽減ブレーキ)は「国内中型トラックでは日野が初となる。市街地での走行も多い中型トラックに最適なシステムとし事故の抑制に大きく貢献する」とした上で、「衝突被害軽減ブレーキの法規に先駆けて対応しており、ASV(先進安全自動車)減税の対象になっている。最新の安全装備としてアピールしていきたい」とした。
新型レンジャーは安全装備の大幅充実だけでなくデザインも一新。佐藤チーフエンジニアは「外観はドライバーが乗りたくなるスタイルを目指し、先進性と躍動感を表現し、街との調和をバランスさせた」と話す。
具体的には「立体的なフロントパネルは、大胆なV字モーションを描き中型らしい躍動感を表している。キャブとバンパーは一体感あるシンプルな造形で街や人に優しい印象を与える。デイライトを備えたLED式ヘッドランプは精悍さを演出しており、日野ブランドを特徴づける新しいアイコンとなる」とのことだ。
一方、新型レンジャーはダウンサイジングした5リットルエンジンが全車に搭載される。佐藤チーフエンジニアは「馬力ラインアップはお客様ニーズを踏まえ、190、210、240、260馬力の4種に集約。260馬力には2段過給ターボを採用し、すべてのエンジンでトルクアップを実現した」と解説。
さらに「低回転からの高トルクを活用することで常用回転域を低く抑えることができ、低燃費運転や静粛性に貢献できる。またアイドリングストップを標準装着して、さらに燃費向上を図り平成27年度燃費基準プラス5%達成車型が大幅に拡大した」と述べた。
また先代と同様に2種類の排ガス後処理システムを採用している。「自家用、レンタルが多い190馬力と210馬力については引き続き尿素フリーの排ガス後処理システムを採用。それ以外では尿素SCRを採用し、動力性能と燃費の高次元でのバランスを実現した。2つの排ガス後処理システムを設定することはメーカーにとって大きな負担だが、お客様にとって尿素フリーは大きなメリットであることから、尿素フリーの設定を残すことにこだわった」と佐藤チーフエンジニアは強調した。
その上で「新型レンジャーは経営者のみならず働くドライバーのことを真剣に考えた商品になっている」と締めくくった。