【2017年3月JRダイヤ改正】JR北海道…旭川乗換えは最小限に

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特急『ライラック』にはかつての『スーパー白鳥』用789系が使用される。
  • 特急『ライラック』にはかつての『スーパー白鳥』用789系が使用される。
  • 789系『ライラック』に施されるイラストのイメージ。
  • 運行初日の現特急『サロベツ』。改正後は旭川止りとなるため、札幌には姿を見せなくなる。車両はキハ183系からキハ261系へグレードアップされるため、宗谷線からキハ183系の姿が消える。
  • 『スーパー宗谷』をPRするデビュー当時の看板。その名は17年の歴史に幕を下ろす。
  • 旭川乗継ぎの場合、2枚の特急券が1枚になって発行される。

12月16日、JR北海道から2017年3月4日に実施するダイヤ改正の概要が発表された。この改正における最大の動きは、札幌~網走・稚内間を直通する特急が削減される点で、このことを中心に見どころやポイントをまとめてみた。

■直通特急削減の目的…廃車減を運用本数減で対処

この改正では、札幌~網走間の特急『オホーツク』が4往復から2往復に、札幌~稚内間の特急『スーパー宗谷』『サロベツ』計3往復が1往復に削減される。代わって、これらの列車を系統分離する形で、旭川~網走間と旭川~稚内間にそれぞれ2往復の特急が新設される。その目的は、老朽化が進む特急形気動車キハ183系0番代の運用を削減することにある。

JR北海道の発表によると同車両は現在、34両が在籍しており、おもに『オホーツク』に使われているが、古いもので32年以上経過しており、メンテナンスコストや部品の供給等を考慮すると、早晩、廃車しなければならない。しかし、廃車分を埋める車両を新製することは財政上極めて困難な状況だという。

2017年3月改正では後継のキハ261系1000番代が追加投入されるが、こちらは利用者数が多い札幌~函館間の『北斗』系統へ投入される。『北斗』で使用されているキハ183系は、国鉄末期に登場した500・1500番代をベースにした新しい車両のため、それが『オホーツク』へ転用され、古い0番代が淘汰されることになるだろう。

しかし、それでも現行のダイヤでは予備車や増結車まで含めると絶対数が不足するため、編成本数を削減する必要がある。現在、『オホーツク』は1日4本、『スーパー宗谷』『サロベツ』は1日計3本の編成が必要だが、一部の運用を旭川折返しとすることで、それぞれ1本ずつ削減できる計算になる。

直通特急の削減は、今年2月まで新青森~函館間で運行されていた『スーパー白鳥』に使用されていた789系0番代を札幌圏に転用する問題も絡んでいた。この車両は半室グリーン車を備えており、現在、『スーパーカムイ』で運行されている789系1000番代や785系と比べると定員が異なるが、グリーン車付きが功を奏して、旭川で半室グリーン車付きの気動車特急と連絡させるには打ってつけの車両でもある。789系0番代を使う列車には『ライラック』と命名されるが、車両を有効に活用する必要に迫られたJR北海道としては、まさに渡りに船とも言える措置ではないだろうか。

■まさに先祖帰り…懐かしの愛称名がリバイバル

旭川で系統分離される列車は、旭川~網走間が『大雪』、旭川~稚内間が『サロベツ』と命名される。また、既存の札幌発着列車は、札幌~網走間が現行と同じく『オホーツク』、札幌~稚内間が『宗谷』となる。札幌~稚内間の列車から『スーパー』の名が外されることになるが、『スーパー宗谷』は、速度向上を図るために搭載された車体傾斜機能を使っていない関係から、当初より所要時間が延びていることもあり、「スーパー」とは名ばかりの状況になっていることもあったのだろう。

『宗谷』の名は、『スーパー宗谷』が登場する2000年3月のダイヤ改正まで札幌~稚内間の急行に命名されており、17年ぶりの復活となる。『大雪』も急行時代の名で、1992年3月のダイヤ改正で特急『オホーツク』に吸収されて以来25年ぶりの復活となる。『大雪』の名は国鉄時代に旭川発着の急行にも使われていたことがあるので、縁も深い。こういった点で、『宗谷』『大雪』ともに先祖帰りと言える。

先祖帰りといえば、旭川で接続する789系『ライラック』にも言えるだろう。2007年10月のダイヤ改正で消えて以来およそ10年ぶりの復活となるが、このときの『ライラック』は『スーパーカムイ』に後継を託している。2017年3月の改正では『スーパーカムイ』が『カムイ』と改められ、実質的に併存する形となった。『カムイ』は国鉄時代の急行『かむい』をカタカナ書きにしたもので、国鉄を知る者としてはこちらも感慨深い。

2017年3月のダイヤ改正では、『ライラック』が14往復、『カムイ』が10往復設定され、『ライラック』の側面には宗谷地方やオホーツク地方、上川地方、空知地方、旭川市、札幌市の観光素材をモチーフにしたラッピングが施されるという。

■乗換えで所要時間が短くなることもある

さて、旭川で乗換えとなると、札幌からの所要時間が延びてしまうのでは?という懸念があるが、JR北海道の発表によると、それは最小限に留められており、むしろ、短くなる列車もあるくらいだ。

具体的には、札幌~網走間の場合、下りでは『オホーツク5号』(札幌15時08分発~網走20時37分着)を受け継ぐ『ライラック25号』~『大雪3号』(札幌15時30分発~網走20時49分着)が10分の短縮となる。上りでは『オホーツク4号』(網走9時23分発~札幌14時46分着)を受け継ぐ『大雪2号』~『ライラック22号』が4分、『オホーツク6号』(網走13時26分発~札幌18時47分着)を受け継ぐ『大雪4号』~『ライラック34号』が1分の短縮となる。

また、札幌~稚内間の場合、下りでは『サロベツ』(札幌12時30分発~稚内18時22分着)を受け継ぐ『ライラック15号』~『サロベツ1号』(札幌12時00分発~稚内17時21分着)が31分、上りでは『サロベツ』(稚内13時44分~札幌19時14分着)を受け継ぐ『サロベツ4号』~『ライラック36号』(稚内13時01分発~札幌18時25分着)が6分の短縮となる。

旭川では最小で10分、最大で16分の乗換え時間が確保されているにも拘わらず、短縮される列車が現れるのは、札幌~旭川間が電車に置き換えられることもあるが、運行時間帯がシフトしたことにより、前後を走る列車の関係で、速度を上げることができる区間が増えたためと思われる。短縮されない列車でも数分の誤差に過ぎず、しかも旭川では同一ホームでの乗換えが配慮されている。

なお、特急料金やグリーン料金については、乗換えが発生する場合であっても、旭川駅で途中下車する場合を除いて通し計算となるので、割高になることはない(「Rきっぷ」などの特別企画乗車券も含む)。大型のキャリーバッグなどを持っている乗客にはやや負担になるものの、筆者はさほど影響はないと見ている。

■785系が札幌~旭川間から撤退…L特急の冠も消滅

札幌~旭川間の特急については、『ライラック』が789系0番代、『カムイ』が789系1000番代による運行となるため、785系が同区間から撤退することになる。同系は、1990年9月、北海道初の130km/h対応特急形電車として特急『スーパーホワイトアロー』にデビュー。以来、2007年に789系1000番代がデビューするまで、一貫して札幌~旭川間の顔として使われてきたが、初期車は登場から26年が経過しており、789系の転用と引き換えに廃車の対象となった。

これにより、残る785系の特急は東室蘭~札幌間の『すずらん』のみとなるが、この列車は6往復中に789系1000番代も入るため、785系を目撃するチャンスはかなり限られてくるかもしれない。

同時に、現在、『スーパーカムイ』『すずらん』に冠されている「L(エル)特急」の名も消える。これは、1972年10月改正で国鉄が全国を走る自由席連結で運行本数が多い列車に付けられたもので、「数自慢、カッキリ発車、自由席」のキャッチコピーが付けられていた。Lの文字は、特急を意味する「Limited Express」の「L」から取られたと言われる。北海道では、1975年7月、札幌~旭川間に初の電車特急『いしかり』が運行を開始して以来のものだったが、40年あまりで幕を下ろすことになった。

■宗谷本線からキハ183系が消える

札幌~稚内間の特急は、札幌~稚内間の『宗谷』1往復、旭川~稚内間の『サロベツ』2往復となるが、それらはキハ261系0番代4両編成に統一される。そのため宗谷本線から『サロベツ』に使われているキハ183系が姿を消すことになる。現行の『サロベツ』は3両編成が基本で、北海道で唯一の普通車のみの特急となっていたが、キハ261系には半室グリーン車のキロハ261形が連結されているため、『サロベツ』にもグリーン車が入ることになった。

ただし、改正後もキハ261系の検査の都合でキハ183系の予備車が使われる可能性は否定できず、現在も『スーパー宗谷』には、キハ183系として分類されるリゾートトレインの『ノースレインボーエクスプレス』がしばしば使われている。また、札幌~旭川間の『旭山動物園号』が運行されない期間は、同列車専用のイラスト付きキハ183系が使われることが考えられ、今冬は『オホーツク』などに充当された実績がある。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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