【川崎大輔の流通大陸】中国で芽生えはじめた中古車ビジネスの今

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中国の交易市場
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巨大な中国自動車マーケットで、売り手責任を明確にしたモデル、ネットを活用した低コストモデルなど新たな中古車ビジネスが生まれはじめている。

◆中国の中古車販売最大のプレーヤー「汽車交易市場」

中国の自動車市場は毎年拡大を続けており、自動車保有台数は世界全体の約15%、1億5400万台に達した。保有台数の増加に比例して中国の中古車市場も拡大している。2015年の中古車総販売台数は約940万台に達し、2016年には1000万台に達すると言われており、中国経済にとっては重要な市場となっている。

この市場における最大プレーヤーは汽車交易市場だ。中古車販売の90%近くが交易市場を通じて販売されている。汽車交易市場とは、新車販売・中古車販売・自動車部品販売などの自動車アフタービジネス業者が1か所に集まって形成されている集積エリアである。中国の各省、各市の工商行政管理部の認可及び管轄下に設置されている集積地で、全国に500から600の集積エリアが存在しているといわれている。

各交易市場は「交易市場公司」と呼ばれる管理運営会社が監督・運営しており、その中に数10から数100社の「経紀公司」という資格を保有する中古車販売業者が入居している。

「交易市場公司」は、行政機関と連携をしながら、交易市場の敷地内に登録事務所を設置して、中古車の名義変更登録や車両検査などの実務を実施している。ユーザーにとっては汽車交易市場で購入をすれば、ワンストップサービスを受けることができ便利である。更に、市場内に入居している各中古車業者と比較するができ、安めに購入できるということで一定の評価を得ている。

「経紀公司」は主に仲介業務を行っており、旧保有者からの車両の買い取りを行わず車両を預かるだけで、その車両を委託販売している。販売が成立した後に、旧保有者と新保有者の名義変更手続きを代行して仲介料をもらっている。汽車交易市場内のワンストップサービスを利用して名義変更の諸手続きを行うのだ。

一般的に先進国における中古車取引は、旧保有者から車両を買い取り(下取り)し、旧保有者名義を販売業車の名義に書き換えて中古車販売業車の保有とする。その後、新保有者に小売りする際に販売業者から新保有者に所有権移転(名義変更)を行っている。この先進国における中古車取引は、売り手の責任が明確である。つまり、販売業者が車両検査と機能保証、情報開示の責任を取ることになる。

一方で、交易市場の中に入っている中国の中古車販売業者は、責任開示責任がだれにあるか不明瞭で、売り手責任が不明確というところに課題が残っているといえるだろう。

◆上海の中古車交易市場

上海の中古車交易市場に入居している経紀公司である中古車販売業者の数は約100店舗、展示販売台数は合計で約1000台あり、店舗あたり10台ほどだ。中古車販売業社の出自の実態としては、中古車ブローカー、自動車関連ビジネス企業、新車ディーラーの中古車部門、大企業の法人車両売却部、などがあげられる。

交易市場は、入居している中古車販売業者に対して、月40台の交易市場内での名義変更を指導している。中古車販売業者は、名義変更のたびに交易市場へ手数料を払うため、名義変更を行う登録台数を増やすことは、交易市場公司の収益を向上させることを意味する。名義変更は、交易市場でしかできない。そのため交易市場の外にある中古車販売業者は交易市場まで名義変更のために足を運ぶ必要があり、それらも収入源となっている。

販売経路は小売り(55%)と卸売り(45%)の混在となっている。販売される顧客の3分の2が上海であるが、残りは地方からの顧客である。仕入れ経路も、個人(40%)と法人(60%)の混在となっている。政府の車、新車ディーラー、一般顧客、オークションがあり、ほとんど上海からの仕入れとなっている。最近では個人の顧客からの仕入れが多くなってきているという。

◆新しい中古車ビジネスの芽生え

最近の中国の中古車ビジネスで成功しているビジネスモデルとして、「C(顧客:Customer)to B(企業:Business)ビジネス」があげられる。顧客からの買い取りビジネスを行い、メンバーとなっている中古車ブローカー・中古車販売業車などへの販売を行うモデルである。

特徴的なのが、顧客が、メンバーとなっている中古車ブローカー・中古車販売業車へウェブを通じてオークションを行う、という点だ。車両を販売する顧客ができるだけ自分の車両を高く処分したいと考えた時にもっとも良い条件を選択できる。なぜならワンストップで複数の入札を得られるためだ。従来の顧客は、交易市場に車両を持ち込み委託販売する必要があったが、このモデルを利用することで買い手と直接交渉を行いグレーな部分を回避して取引ができるようになったのだ。

またカーネックスという会社が行っている「C to Cビジネス」も出てきた。消費者間の取引プラットフォームとなるショールームでの駐車場所を提供するモデルで、委託販売を行う個人の売り手から駐車スペース料金、更に成約後は成約手数料をもらうことで成り立つ。

特徴的なのが、委託車両を預かった際に売り手に車両評価価格の70%まで融資ができるという点だ。残りの30%を販売制約時に金利、整備費用、制約手数料等を差し引き車両の売り手に支払い、同時に70%の融資返済を行うモデルである。

近年好調な中古車市場の拡大にあいまって、中古車公益市場の数は増えた。高い潜在需要に反して中古車ビジネスモデルが、伝統的な交易市場での販売仲介ビジネスだけであった。しかしながらようやく、「C to Bビジネス」や、「C to Cビジネス」などの新しい潮流も生まれてきた。中古車のユーザーは価格パフォーマンスを重視する傾向があり、リピーターとなる場合が多い。

そういった意味で、売り手責任を明確にしたモデル、ネットを活用した低コストモデルなど新たな中古車ビジネスの発展に中国での大きな商機があると考える。

<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《川崎 大輔》

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