ハーレーの新型エンジン『MILWAUKEE EIGHT(ミルウォーキーエイト)』の詳細が、ハーレーダビッドソンジャパン(HDJ)の担当者への取材でわかった。
ミルウォーキーエイトには、微細な振動を打ち消すためのカウンターバランサーが内蔵されている。不快な振動を75%除去するとともに、アイドリングの低回転化をも実現。発電システムの改良により、アイドル時の発電性能を50%向上している点もアイドリングを下げることに貢献している。
アイドリング回転数は、先代のツインカムエンジンでは1000±50回転だったが、ミルウォーキーエイトでは850回転と下げた。HDJ担当者は言う。
「ハーレーのエンジンは、低い回転数でアイドリングするところに昔から人気がありますが、ツインカムエンジンでアイドリングを下げるカスタムをすると、トラブルに至るケースがあります。ミルウォーキーエイトがアイドリングを下げたのは、ユーザーからの要望を反映したものです」
さらに燃焼効率の向上を図って、1つの燃焼室に点火プラグを2本設けるツインスパークシステムを新採用し、デュアルノックセンサーも導入。環境面に対しても高性能化し、世界基準となる欧州環境規制ユーロ4以降への対応も実現している。
吸気系も一新され、フューエルインジェクションのスロットルボディを50→55mmにし、吸気ポートにはデュアルスプレーインジェクターを新たに採用。エアクリーナーも容量を増やし、ケース形状も新しくなった。
エキゾーストシステムも新設計されたもので、乗り手に熱を感じさせないよう配慮したものとなっている。リアシリンダーからのエキパイが内側にレイアウトされ、キャタライザーをマフラーエンドに移設した。従来ではライダーが地面へ足を出したところに触媒があり、これが乗り手に熱を感じさせていたと担当者は分析する。触媒の位置を変えたことで、これを解消している。
また、新型アシスト&スリップクラッチの採用やマスターシリンダーの刷新により、クラッチのレバー操作が軽くなった。エンジンスターターは1.6kwに出力アップされ、プライマリーチェーンのテンショナーなども改良され、ノイズを低減した。
Vツインならではの味わい深いフィーリングはそのままで、最大トルクは10%アップ。ミルウォーキーエイトを搭載するツーリングファミリーでは前後サスペンションも一新され、クルージング性能を高めている。
フロントはショーワ製のデュアルベンディングバルブフォーク。インナーチューブ径49mmで、ストローク量は117mm。ローモデルでも98mmを確保した。フォーク本体が軽くなっていて、軽快なハンドリングを実現した。
そしてリアサスペンションは、手動ダイヤルでプリロード調整が可能。ツールを不要とし、23回転、25mmの調整が出来るようになり、セッティング範囲を3割増しとしている。
メインフレームは基本構成をそのままに、エンジンマウントを見直し最適化。つまり車体のサイズ感は従来と変わらない。
ミルウォーキーエイトを積むニューモデルはトライクに登場。『FLRT FREEWHEELER(フリーウィラー)』だ。軽快なストリップ仕様で、北米仕様ではフォグランプをヘッドライト左右に備えるが、日本導入モデルではヘッドライトのみでフロントまわりをスッキリとさせた。クルマのMT免許で乗れる。