鉄道の災害運休区間、約50kmの大幅減に…7月末

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7月末時点の災害運休区間。豊肥線などの一部再開により運休距離が約50kmの大幅減となった。
  • 7月末時点の災害運休区間。豊肥線などの一部再開により運休距離が約50kmの大幅減となった。
  • 山田線は昨年12月に松草~平津戸間の線路内に土砂が流入し、列車が脱線。今年9月頃から復旧工事が本格化し、来年10~12月頃にも再開される見込み。
  • 常磐線の相馬~浜吉田間は12月10日の再開が決定。ルートは津波被害を避けるため内陸側に移される。画像は移設後の山下駅のイメージ。

災害による鉄道路線の長期運休区間は、7月末時点で461.4kmだった。6月末時点に比べ、54.3kmの大幅減少となった。

熊本地震の被災路線のうち、豊肥本線の阿蘇~豊後荻間25.3kmが7月9日に再開し、南阿蘇鉄道の高森線も中松~高森間7.2kmが7月31日に再開した。このほか、東日本大震災に伴う福島第一原発事故の影響で運転を見合わせている常磐線竜田~原ノ町間46.0kmのうち、小高~原ノ町間9.4kmが7月12日に運転を再開した。

6月の大雨の影響で不通となった呉線の三原~忠海間17.2kmは、7月15日に再開した。また、芸備線で線路内への土砂流入による脱線事故が7月14日に発生したが、翌15日の昼頃に運転を再開している。7月27日の大雨で一部運休中の富山地方鉄道(富山地鉄)立山線は、数日中に再開の見込みだ。

7月末時点で長期運休中の路線は以下の通り。

■JR北海道 日高本線 鵡川~様似(北海道) 116.0km
2015年1月の低気圧による高波の影響で、厚賀~大狩部間の土砂が流出。さらに同年9月の台風17号でも豊郷~清畠間と厚賀~大狩部間で路盤の流出が発生した。この影響で両区間を含む鵡川~様似間の運休が続いており、バスによる代行輸送が行われている。再開のめどはたっていない。沿線自治体では被害のなかった鵡川~日高門別間の先行復旧を求める声も上がっているが、一方で災害発生前から利用者が大幅に減少しており、路線の存廃問題も浮上している。

■JR東日本 山田線 上米内~川内(岩手県) 51.6km
2015年12月に松草~平津戸間で土砂流入による脱線事故が発生。同区間を含む上米内~川内間の運休が続いている。代行バスは運行されてないが、岩手県北バスの都市間バス『106急行』への振替輸送が行われている。JR東日本は今年9月頃から復旧工事を本格化させる方針で、2017年の10~12月頃にも再開される見込みとなった。

■JR東日本 山田線 宮古~釜石(岩手県) 55.4km
2011年3月に発生した東日本大震災の影響で路盤流出など甚大な被害が発生。岩手県北バス・岩手県交通の路線バスによる振替輸送が行われている。三陸鉄道が運行を引き継ぐことを条件に、2018年度末の再開に向けて復旧工事が進められている。

■JR東日本 大船渡線 気仙沼~盛(宮城県・岩手県) 43.7km
■JR東日本 気仙沼線 柳津~気仙沼(宮城県) 55.3km
2011年3月に発生した東日本大震災の影響で路盤流出など甚大な被害が発生。暫定復旧策としてバス高速輸送システム(BRT)を導入、被害が少なかった線路敷地の一部をバス専用道に改築して代行バスが運行されている。JR東日本と沿線自治体は、BRTを「本格復旧」と位置づけて継続運行する方向で合意し、鉄道の廃止が決まっている。

■JR東日本 常磐線 相馬~浜吉田(福島県・宮城県) 22.6km
2011年3月に発生した東日本大震災の影響で運休中。バスによる代行輸送は不通区間より広い相馬~亘理間で行われている。ルートを内陸側に移設する工事が進められており、今年12月10日に再開する予定。

■JR東日本 常磐線 竜田~小高(福島県) 36.6km
2011年3月に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所事故の影響で運休中。代行バスは運休区間より広い竜田~原ノ町間で運行されているが1日2往復と少なく、途中駅は小高駅を除き通過している。

JR東日本は今年3月、全線再開に向けたスケジュールを発表。浪江~小高間を2017年春、竜田~富岡間を2017年内に再開し、残る富岡~浪江間を2019年度末までに再開する方針を示している。

■JR東日本 只見線 会津川口~只見(福島県) 27.6km
2011年7月に発生した福島・新潟豪雨の影響で、橋りょうの流出など甚大な被害が発生。バスによる代行輸送が行われている。再開のめどはたっていない。

■大井川鐵道 井川線 接岨峡温泉~井川(静岡県) 10.0km
2014年9月の大雨で発生した土砂崩れの影響で運休中。代行輸送は行われていない。今年11月頃に再開する模様。

■富山地方鉄道 立山線 本宮~立山(富山県) 4.8km
今年7月27日の大雨の影響で、本宮駅付近の線路内に土砂が流入。バスによる代行輸送は運休区間より広い千垣~立山間で行われている。数日中に復旧する模様。

■JR九州 豊肥本線 肥後大津~阿蘇(熊本県) 27.3km
4月に発生した熊本地震の影響により、立野~赤水間で大規模な土砂崩れが発生するなど甚大な被害が発生。同区間を含む肥後大津~阿蘇間で運休が続いている。代行バスは運休区間より広い肥後大津~宮地間で運行されているが、平日の朝夕ラッシュ時のみで、瀬田・立野両駅は通過している。復旧には相当な時間がかかる模様。

■南阿蘇鉄道 高森線 立野~中松(熊本県) 10.5km
4月に発生した熊本地震の影響で、路盤が流失するなどの被害が発生。中松~高森間が7月31日に再開したが、全線再開のめどはたっていない。

※参考:長崎電気軌道 桜町支線 長崎駅前~公会堂前(長崎県) 0.9km
6月に発生した脱線事故の影響で、桜町支線を走る赤迫~蛍茶屋間の3号系統が運休。後に蛍茶屋行きは運転を再開したが、赤迫行きは現在も運休が続いている。

《草町義和》

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