【川崎大輔の流通大陸】転換期となるか、2016年中国中古車市場

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2016年以降、中国の中古車市場は一気に拡大するといわれている。一方で、中古車の信頼性が低いという課題もある。これからの中国自動車アフターマーケットのビジネスにおいて、日本企業に商機が訪れるだろう。

◆中国自動車市場の動向

中国の新車販売台数の規模は、7年連続で世界一を維持している。2015年の新車販売台数は2014年に比べて4.7%増の2459万台であった。2位であるアメリカ新車販売台数の1747台を大きく引き離している。中国の自動車市場は毎年拡大を続けており、自動車保有台数は1億5400万台に達した。世界全体の約15%を占めており、その規模はアメリカに次いで世界第2位となっている。

コンサルティング会社のデロイトは2050年には中国の乗用車保有台数は2億5000万台に達すると予測している。現在、中国の1000人あたりの保有台数は約50台(中国都市部は120台)だ。一方で、日本は約600台、アメリカ約800台となっており、潜在的成長の余地はまだあるといえる。

過去数年を見ると新車市場の伸びが徐々に低下してきている。他方で中古車市場は拡大し続けている。2016年以降、今後更に中国の中古車市場の拡大が拡大するといわれている。

◆1000万台、目前の中国中古車市場

中国の中古車市場は2015年の総販売台数が約940万台に達した。2016年には1000万台に達するといわれている。4000億元・1000万台という中古車市場規模が現実的な状況となり中国経済にとっては重要なマーケットとなっている。

中国は、一般的に他国と比べると新車市場に対する中古車市場の比率がまだまだ低いといわれている。新車登録台数(新車の販売台数)と中古車登録台数(中古車の「新規登録台数」、「移転登録」、「名義変更台数」の3業務合算台数)の比率を新中比率という。この比率が高いほど相対的に中古車流通が活性化していると考えられているが、中国の新中比率は0.4程度という低い数値になっている。他国の新中比率を大ざっぱに比較すれば、イギリスが3.0程度、アメリカが2.5程度、日本が1.5程度である。このような状況からも、中国の中古車流通は更なる活性化が見込まれている。2020年には、中古車市場規模が2,000万台に倍増するともいわれている。

筆者の中国における中古車販売店へのヒアリングによれば、中古車の販売と仕入れでは、仕入れの方が2倍難しいと聞いた。売り手市場から見れば自動車保有台数の規模が中古車の仕入れのしやすさを左右することになる。しかし、ここ数年の保有台数の拡大で中古車を比較的仕入れやすくなってきており、更に自動車の乗り換え年数も短くなってきている。都市部では7年の乗り換え年数であったものが、直近で5年に短縮をしてきているという。買い手市場から見れば、自動車市場が成熟し中古車を購入しても良いというユーザーも増えてきた。中国の新聞のアンケートによれば約80%のユーザーが中古車購入も検討していると答えている。このようなことからも、新車市場以上に中古車市場が伸びる可能性が高まってきている。

◆2016年からの中古車流通

2016年以降、中国の中古車市場は一気に拡大するといわれている。

中国は多くのエリアに分かれており、一部のエリアでは特殊な政策のために中古車販売台数が下がってきていた。原因は、渋滞解消のための都市部でのナンパプレート制限による自動車台数規制。更に環境対策のために都市部や地方で行われている排気ガス規制があげあれる。規制をクリアしない車はナバープレートが登録できない。そのため、旧環境基準の中古車は買い手がつかない状況となっていた。

例えば、上海からウイグル地区へ流れている中古車もEURO4の規制を求められ車歴7年以上の車は取引を制限されるようになっていた。車歴の古い中古車は、出所地域のみで流通可能となり地方への転売が不可能であった。つまり、規制によって中古車が中国国内各地の市場にうまく流通できない構造になっていたのだ。

しかし、2016年3月に中国国務院が、北京や上海、広州など大気汚染の防止に注力するエリアを除いて、2016年5月末以降に規制中止するという政策を発表した。今回の政策によって市場の流通拡大を抑制していたブレーキが外されることとなる。中国の中古車業界ではついに中古車市場拡大を促進する政策が出たといわれている。更に、中国では2010年9月1日以降に購入された車は、6年間車検免除の対象となっていたが、その買い替え時期が2016年より始まる。その時期に中古車市場促進の政策が重なることで、市場活性化の相乗効果が期待されている。

◆中古車市場拡大にむけての課題

新中比率が低い原因としては、中古車には乗りたくないという中国人特有のメンツがあるだろう。しかし、それ以上に中古車の信頼性が低いということが大きな原因であるといわれている。走行距離メーターの改ざんや、偽物の部品装着、中古車販売店に騙されるという不安など今後の課題がある。更に、消費者における車の知識度が浅いことや、整備などのクオリティが低いなどの指摘もある。

高い潜在需要に比較して、中国では中古車の査定や流通にかかわる人材が大幅に不足をしている。査定などを含めた中古車の信頼性を高めるための標準化や、ネットなどを活用した中古車流通の育成発展に、中国中古車市場拡大にむけた課題解決と商機があると考えられる。特に、自動車アフターマーケットのビジネスにおいては、日本企業が持つ高い商品力や技術力、更にサービス力で他社との差別を図れる余地が十分にある。日本企業が提供できるこのような価値によって、中国の中古車市場の発展に加速がつくだろう。そうすることで、健全な中国自動車市場を実現していくことが今の日本企業に求められている。

<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《川崎 大輔》

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