【川崎大輔の流通大陸】トヨタ車の装着率20%、ASEANから世界めざす「TRD」

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タイのTRDショールーム
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  • トヨタ ハイラックス REVO TRDコンセプト(タイ国際モーターエキスポ15)
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TRD ASIA CO., Ltd.は、2006年にタイに進出した。トヨタテクノクラフト取締役であり、TRD ASIAの社長でもある村田昌亮氏にTRDのタイにおける成功要因と今後の展望について話を聞いた。


◆TRD ASIAのASEAN市場

TRD ASIAは2006年にトヨタテクノクラフトの子会社としてタイに設立された。トヨタモータータイランド(TMT)のキャンペーン車両(TRDエディション)の開発を行っている。これらのキャンペーン車両は、タイを中心とするASEAN諸国のトヨタのディストリビューターを通じて完成車として販売されている。

日本では自動車レースやスポーティーなカスタマイズパーツで「TRD(Toyota Racing Development)」ブランドに馴染みがある人も多いだろう。現在タイで生産・販売されているトヨタ車のおよそ20%に、TRDのパーツが取り付けられているという。車種によって異なるようだがしっかりとASEAN諸国の市場にTRDブランドが定着している。村田氏に尋ねると「はっきりと調べたことはないが、タイにおけるTRDの認知度は90%近くあるのではないか。」と教えてくれた。

TRDのASEAN市場の拠点としては日本とタイとインドネシアにある。基本的にはそれぞれの現地で生産されたトヨタ車に対してTRDエディションの開発を行っている。車種によっては新品パーツ部品として流通しているが、基本的には純正パーツとして完成車につけられて販売している。

価格帯のイメージは、特定車種の標準グレード(TRDエディション)と最高級グレード(TRDエディションではない)が同価格に設定される。それによりユーザーは、同じ価格帯で高級グレードか、スポーティーグレード(TRDエディション)を選択することができる。


◆市場はトヨタ新車販売台数に比例

2015年のタイ国内の新車販売台数は前年比9.3%減の79万9594台で、3年連続で前年実績を下回った。TRD ASIAの市場はトヨタの新車販売台数に比例する形で推移しているという。2011年の洪水以降に一気に需要が爆発し反動で急激な落ち込みとなったが、その持ち直しが未だ遅れている。

昨年は新車販売台数が落ち込んでいたため、その落ち込みを補完すべくトヨタモータータイランドがTRD ASIAのアフター品を活用したキャンペーンを行った。具体的には、タイにあるトヨタディーラーにトヨタモータータイランドからTRDパーツのキャンペーンセットを提供するというものだ。このTRDパーツは完成車に純正で取り付けるものとは異なる部品で、ディーラー側でTRDパーツセットを車に取り付けてもらい、純正のTRDエディション車とは異なる車が出来上がった。他の人とは異なる車に乗りたいという嗜好性を刺激するキャンペーンだ。2015年の年末の限定期間で行ったキャンペーンであった。ディーラーからは好評とのことで今後も続くか気になるところである。

個人的に興味を持ったのは、タイでは純正の完成車として販売されるTRDパーツの活動領域が、アフターパーツ領域にまで広がったということだ。長期的な視野では、TRDパーツをつけたいがために、トヨタ車を購入していくということが市場のトレンドになる可能性があるかもしれない。


◆TRD ASIAが追求していることとは?

「常に人と違う新鮮なデザイン、更にスピードが必要」と村田氏が教えてくれた。「難しいところは、毎回最高のもの、喜んでもらえるもの。更に前よりもカッコいいものを出す必要がある。昔の方が良かったといわれたら悲しい」と、デザインにかける意気込みを語ってくれた。また、「最近はモデルチェンジのサイクルがどんどん短くなってきた。ユーザーも成熟してきているので年に1度くらいの変更が必要でどんどん新しい車体が出る」という。新しいデザインを短期で導入することを常に追求していくことが、TRD ASIAの大きな課題であり、また1つの成功要因となっているのだろう。


◆TRD ASIA市場の方向性

タイにおける新車販売台数の回復が遅れてはいるが、TRD ASIA市場への閉塞(へいそく)感はインタビューをしていて感じることはなかった。村田氏に市場の方向性を尋ねると「確かにユーザーの嗜好の変化は出てくると思う。ただ、他の人とは違うものが欲しいというニーズは変わらない」と教えてくれた。

それだけにとどまらず、ジェンダーレスでの新しい市場の可能性について「TRDはスポーツ系のデザインでほとんどが男性ユーザーだったが、女性ユーザーを意識したところも今後のTRDの方向性だ。例えばMINIなどが良い例だろう」と村田氏は指摘する。男女の境界線を消せるデザインを市場のトレンドにすることで市場が広がる可能性があるということだ。


◆TRD ASIAのこれからの展望

「戦略的には、トヨタの世界戦略車(IMV)の国々へTRD ASIAを進出させていきたい」と村田氏は考えている。トヨタで最も成功したビジネスモデルのIMVとは、新興国向けに開発された戦略車で、ピックアップ(ハイラックス)、SUV(フォーチュナー)、ミニバン(イノーバ)がある。生産拠点をタイ、インドネシア、南アフリカ、アルゼンチンの主要4拠点に集約。プラットフォームを1つにして、部品の現地調達化も進めることで、開発コストの低価格化を実現させた。世界中で年間110万台ほどの生産台数だが半分近くがタイで作られている。例えば、『ハイラックス』のTRDエディションはタイとインドネシアのみで作られ、世界中に流通してきている。

TRD ASIAとして進出していくためには、タイから世界中のIMVの国々へネットワークを構築し、それらができる人材育成も行っていく必要がある。更に、モータースポーツもダカールラリーやアジアのクロスカントリーラリーなどのようにIMVを使ったトラック系スポーツレースのトレンドが生まれてきている。そういったところに潜在顧客を近づけていくといったことも今後重要になってくるだろう。日系企業の高い品質、技術、そして信頼をアセアンから世界へ広めていってほしい。アセアンから世界を目指すTRD ASIAに強い期待を持っている。


<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。
《川崎 大輔》

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