【川崎大輔の流通大陸】都市から地方へシフトするミャンマー中古車流通

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ヤンゴン市内(2)
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2015年11月の総選挙ではアウン・サン・スーチー女史が率いる野党のNDLが勝利を収めミャンマーは新しい時代の幕を開けた。2015年12月に右ハンドル規制が出されたが、2016年の1月に元に戻った。混乱が見られる自動車市場はどうなるのだろうか?


◆完成車輸入解禁による自動車市場の拡大

ミャンマーでは2011年の民政移管の際に、政府は「経済開放と完成車輸入の解禁」の方向性を打ち出し次々と具体的な輸入許可の政策を取り入れていった。2011年9月、政府はスクラップポリシーを発表し完成中古車輸入を解禁。20年以上たつ中古車をスクラップにすると1996年以降登録の中古車の個人輸入が許可された。

更に2000cc以下の乗用車の輸入登録税を引き下げ小型車の輸入を促進。2012年5月、2007年以降登録の車であれば中古車の個人輸入を可能とした。右ハンドル輸入も認められ、人気の高い日本の中古車の輸入が急増。貿易統計データによれば、2011年の日本からミャンマーへの中古車通関台数は1万9621台で2012年には12万0805台へ、輸入量が急激に増加することとなる。

この結果、ミャンマー国内での流通が構築できておらずスムーズに在庫を販売できないこと、またミャンマーへの輸出増によって日本でのオークション価格が高騰したなどの問題点の指摘がされている。

一方で、需要が増してミャンマー自動車市場が拡大してきたということは事実である。2014年データでは商用車を含めた台数は16万0437台である。財務省の輸出台数に関する貿易統計は20万円以下の輸出車はカウントされていないため実際の台数とは異なっており、実質約18万台(乗用車12万台、商用車6万台)であるといわれている。日本からの中古車輸出仕向け地として第3位(2014)の規模で大きな中古車輸出市場へと急成長を遂げた。他国にもいえることだが、特にミャンマー政府の自動車施策は自動車市場に大きな影響を及ぼしている。


◆ミャンマーの中古車流通市場

ミャンマーでは公的な自動車流通の統計はないが、自動車保有台数は直近で約60万台と言われている。FOURINが出す1000人あたり自動車保有台数(2013)の推計値では、ミャンマーは9万4000台だ。他(ほか)アジア諸国での1000人あたり自動車保有台数(2013)はマレーシアで394台、タイで207台、インドネシアで78台であることから、将来のポテンシャルは大きい。

一方で、ミャンマーは日本からの中古車でほとんどのミャンマー国内の保有台数を賄うといういびつな構造となっている。確かにミャンマーではすでに本格的な新車販売がスタートした。しかしミャンマー国内の新車販売台数はまだ2000台(2014)ほど。ミャンマー国内の自動車販売台数の95%以上が日本からの輸入中古車販売となっているのが現状だ。

ミャンマーにおける中古車流通は、中古車ディーラーと地元のブローカーの流通経路で取引が行われている。ヤンゴンにある有力中古車ディーラーへのインタビューによれば、中古車ディーラーの販売はエンドユーザーへの小売りと、ブローカーを中心とした業者への卸売りがある。中古車ディーラーの販売形態は在庫販売と受注販売だが、ブローカーでは委託販売も行っている。最近ではヤンゴンにおける中古車市場がダブついており、マンダレーを中心とする地方からのブローカーが多くなってきている。仕入れは日本のオークションサイトを通じてミャンマーへ輸入されるのが一般的である。エンドユーザーからの買い取りもあるが10%ほどと数は少ないようだ。


◆中古車天国ミャンマーの今後の動向

今後の動向としては、間違いなく地方への中古車の流通という動きが加速するだろう。特にミャンマー中古車市場はヤンゴン第2の都市マンダレーへ拡大する。2015年に自動車市場調査でヤンゴンの某中古車ディーラーを訪問して最近の中古車市場の傾向について話を聞いた。ヤンゴンで高級車中古車を中心に合計5店舗を経営するオーナーは「最近は地方からのお客様も多い。マンダレーからが特に多い。中古車を購入してそのまま自走して持って行っている。今だとヤンゴンのお客様とマンダレーからのお客様は同じくらいの数」という。

保有台数の7割、60万台のうち約42万台がヤンゴンにあるといわれる。ヤンゴンの人口を約600万人とすると、ヤンゴンエリアにおける1000人あたりの自動車保有台数は70台だ。ヤンゴンを除く地方では1000人あたりの保有台数が3から4台となる。ヤンゴンと地方では大きな差があるのがわかるだろう。

ミャンマーで唯一の日系自動車メディアの「カーサーチ」でのインタビューでも地方への中古車流通業車の進出、拡大の動きを感じた。ヤンゴンの中古車ディーラー数は大小合わせて約160~170店舗である。現在カーサーチに広告を載せているミャンマーの中古車ディーラーは全部で25社である。そのうちヤンゴンのディーラーは16社、残りはミャンマー第2の都市マンダレーのディーラー(9社)とのことであった。今まではヤンゴンへの1極集中型のいびつな自動車市場構成であったが、自動車流通業者は、第2の都市マンダレーへの進出・拡大に動き始めている。

もう1つの重要なポイントは右ハンドル規制による中古車市場への影響である。2018年からミャンマーで走れる自動車は左ハンドルのみにしようと政府が動いていたが、2015年12月19日に突然右ハンドル規制が出された。内容は2016年4月以降に新しく自動車を輸入する場合は左ハンドルしか認めないというものであった。

一方で、元々所有していた自動車を買い替える場合は右ハンドルが可能であり、ミャンマー国内の中古車価格が上がった。しかしながら中古車業界の圧力によって、2016年1月7日に再度ひっくり返り、元の右ハンドル自動車が輸出できる状況に戻った。これは現政権の計画であり、市場が混乱する結果となった。NDLの政権は4月からスタートする。自動車は税収面でのインパクトが強く多くの利権が絡むため不明な部分は多い。

個人的な見解は中古車がマンダレーなどの大都市にまである程度普及した後に、段階的に規制されていく可能性が高いと考えている。


<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。
《川崎 大輔》

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