【土井正己のMove the World】2016年、本格化する「インバウンド経済」

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印マヒンドラが三菱農機に資本参加。
  • 印マヒンドラが三菱農機に資本参加。
日本経済にとって、昨年の一番の明るい話題は、何といっても「外国人観光客の急拡大」だったのではないだろうか。昨年の外国人観光客の総数は、まだ発表されていないが、2000万人に手が届きそうな数字となるだろう。

一昨年が、1300万人強だったことを思うと大幅な増加だ。また、それらの外国人客による買い物が、「爆買い」と称されるまでに経済に影響を与えたことは、どの経済アナリストも想定していなかったことである。このインバウンド客の拡大とその消費による経済効果は、今後も拡大し続けると思う。

インバウンドの拡大は、何を意味するのだろうか。そこには3つの要素がある。まず、アジアの経済成長だ。中国、韓国、台湾などの国からの観光客はもちろん増えているが、意外にインドあたりからの観光客も10万人を超えてきており、前年比で17%程度増えている。

2つ目の要素は、観光客のサービス・品質重視の傾向だ。「日本に行けばいいサービスを受けられる」、「同じブランドでも日本で買う方が品質がいい」という品質重視の傾向はアジア全体で広がっている。3つ目の要素は、日本は物価が決して高くないということだろう(円安の影響だけでなく、探せば安くていいモノ・サービスが結構見つかるということ)。


◆「商品」のインバウンドは30年前から

考えて見ると、「商品」のインバウンド拡大は、既に30年前から始まっていた。「100円ショップ」が初登場したのが1985年だ。この年は、「プラザ合意」が行われた年で、1ドルが200円台から100円台前半に急激に円高が進み、輸入コストが一挙に半額近くになった年である。アジアからの商品輸入は、このころから大きく増えだした。最初の頃は、「品質が悪い」と、客足が遠のいたこともあるが、最近では、「100円ショップ」の品質も改善してきている。この様子だとTPPの後押しもあり、この傾向は、これからも当面続くであろう。

このように、「インバウンド拡大」は、30年前に「商品」から始まり、ここにきて「ひと」が加わってきたということである。では、「商品」・「ひと」の次は、何が来るのだろうか。私は「資本」だと見ている。アジアには十分な資本力がある(一人当たりGDPでは、シンガポール、香港は日本を上回っている)。また、アジアの品質重視の傾向は、日本ブランドを一層高めている。アジアの企業が、日本に投資目当ての「お宝探し」にやってくるのは、当然の成り行きだろう。


◆三菱重工マヒンドラで松江が沸く

昨年5月、インドのマヒンドラが、三菱重工の子会社である三菱農機から33%の株式を取得し(第三者割当増資)、資本参加した。三菱農機は、国内でのトラクター販売ビジネスが中心だったが、地方経済の衰退と共に、販売不調という状況が続いていた。同社の本社(工場)は、島根県の松江にあるが、工場も決して明るい将来を描ける状況ではなかった。早期に海外への販路拡大が望まれた。

一方、マヒンドラはインドの自動車メーカーとして知られているが、実は、インドでトップクラスのトラクターメーカーでもある。米国やアジアにも、強力な販売網を持つが、「品質を売り込むブランド力」が足りなかった。そこで、三菱農機に資本参加し、社名も「三菱マヒンドラ農機」として、「三菱ブランド」にあやかる戦略を取ったということである。三菱側にとっても、海外での販路を一挙に手に入れることができるので、まさに「Win Win」の関係が成立したわけだ。これで元気が出たのが松江市だ。昨年12月、松江市を含む島根、鳥取の5都市連携が、インド南部のケララ州の州政府と経済協力の覚え書きに調印した。


◆外資の地方流入が本格化する年

「地方創生」には、このように外資を呼び込むことが大きな起爆剤になる。日本の地方には優秀な現場力、モノづくり力が息づいており、これらが、これからももっと元気に成長していくためにも、外資との連携が重要だと思う。外資側にもそのニーズが存在することから、「資本」のインバウンドは、これから本格化するだろう。「三菱農機マヒンドラ」が「地方創生」のモデル事業として語られる日が来ることを期待したい。


<土井正己 プロフィール>
グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサルティング・ファームである「クレアブ」代表取締役社長。山形大学 特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年まで チェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事。
《土井 正己》

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