【川崎大輔の流通大陸】日本車を求めるスリランカ、中古車輸入政策の変遷

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ハーバントータ南
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  • 図表1 スリランカ自動車自動車保有台数推移
  • 図表2 スリランカ向け中古乗用車輸出台数推移
  • 図表3 スリランカの新制度による税額
  • ハーバントータ港の車(2)
スリランカでは、2015年10月18日に輸入業者による価格申告制度を廃止が廃止され、更に11月20日より新たに中古車の税率がアップしたことにより、全面的な増税が決定した。今後の方向性が気になるところだ。


◆スリランカ中古車ビジネスの大きなリスク

2015年の11月末にスリランカを訪問してきた。つい最近まで北と南で内戦が行われていた国である。しかし、そういった内戦の傷跡らしきものは既に見当たらず、6年前に内戦が終結した後の急速な経済活動の再開や海外投資の活性化によって、確実に右肩上がりの経済成長を続けている。

1948年まで英国の植民地だったスリランカは、日本と同じ左車線。そのため輸入できる車を右ハンドル車に限っており、スリランカ国内で流通される中古車のほとんどが日本から輸入されている。

スリランカ向け中古車輸出の特徴は、高年式・高価格の良質車が取引されているということだ。日本からの中古乗用車の全世界向けFOB平均価格は60 万~70 万円であるのに対して、スリランカ向けFOB平均価格は150 万~200 万円と高水準で推移している。乗用車は新車登録日から2年以内とする年式規制を採用しているのに加え、ハイブリッド車の輸出が多いことが高価格の背景にある。環境問題を重要視し、低燃費車やハイブリッド車の輸入関税は引き下げられる傾向が強いためだ。

空港からコロンボ市内に行く車の中からは、新しくきれいな車が目立つ。一方で、中古車流通業界の中では、スリランカは中古車の輸入制度が頻繁に変更される市場として知られている。それがスリランカ向け中古車ビジネスの大きなリスクとなっている。


◆スリランカ中古車輸入制度の変遷

タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)との内戦終結以降、2010年6月1日に発効した中古車の物品税等輸入税の引き下げがあった。輸入抑制をしていた反動によってスリランカの中古車輸入が一気に増加。それによって、2010年以降のスリランカの自動車保有台数は一気に増加している(図表1参照)。以降、増え続けていた輸入車の抑制を目的として、再び2012年3月31日に中古車の物品税等の引き上げと輸入可能な中古車の車齢改正が発効され2012年の輸入台数が減少している。

これは国内における交通渋滞や環境問題などに対応するためと公表がされている。2013年には、車両の課税対象額の基準となるFOB価格の減価率が変更となり実質的に関税が値上がりすることになり特に商用車への影響が出た。

2015年1月に新しい大統領が変わったスリランカでは、大統領選挙前の2014年10月24日に商業車両と1000cc以下の軽自動車の大幅減税(202%から173%)が実施され、「ガラ軽」と呼ばれる中古軽自動車のスリランカ輸出が急増した。また、2015年1月30日には、大統領選前に大盤振る舞いされた中古自動車の輸入関税が変更になり、ハイブリッド車の関税が大幅に上昇することになった。この改正で、これまで58%だった関税率が80%に増税となり、スリランカ向けの高年式のハイブリッド車輸出は下火となった。スリランカのこのような中古車輸入制度の変更は、日本の中古車オークションでの価格に大きな影響を及ぼす同時に輸出台数にも影響を及ぼしている(図表2参照)。


◆直近のスリランカの制度改訂

2015年10月18日に輸入業者による価格申告制度を廃止が廃止され、11月20日には新しい中古車の輸入税が公布された。政府の財源を税制で確保する意向が強く出た改訂となり、全面的な増税となっている。

10月18日の改訂では、輸入業車ではなく、税関当局によって高額の推定価格が出されることで日本からの中古車価格が上がることになる。推定価格に対して税率がかけられるため政府に入る税金額が多くなる。スリランカ現地での中古車輸入業車へのインタビューでは税関当局の推定価格は高すぎであると批判の声が上がっており、実質的な増税だ。

11月20日からの自動車輸入税は、ほとんどの車種の輸入税が引き上げられた形となっている。ガソリン車(排気量によるがだいたい150%から160%)の増税だけでなく、環境対応のハイブリッド車(排気量によるがだいたい80%から90%)や電気自動車(5%から50%)も大幅増税となった。環境対応車も大幅増税されたということで今後の見直しがあるかは引き続き確認が必要だ。車体価格、および税率の2つの制度改訂による合計の増税額は、トヨタの『カローラアクシオ』であれば約38万ルピー、『アクア』であれば約48万ルピーになる(図表3参照)。貿易収支も赤字が続き、IMFや中国などから多額の債務を負っているスリランカにとって、自動車関連の税収は最も安定し、魅力的な収入源となっているのが現状だ。

更に、2012年より国家公務員などへ配られていたパーミットという制度にも改正が入った。スリランカでは民間の輸入車に対しては高い税金が課せられるが、国家公務員に対しては税金を低く抑えた車が購入できるようなパーミットが支給されていた。税制を定める政治家たちが自分たちに優遇税制を与えている構造になっていたが、見直しがなされる。


◆今後のスリランカ中古車ビジネスの展望と対応

現地スリランカでの中古車輸出業者へのインタビューでは、特に大きな変化を心配している様子は見られなかった。ただし2~3か月は市場の動向を確認したいと言っている。今回の税制改正後、全体総数は調整が予想されるだろう。一時的には減少傾向の可能性は高い。しかしながら長期的には、市場拡大の傾向であることはまちがいない。

実際にビジネスをやる際の対応としては、常に頭金などを確保して、万が一の際のリスクやダメージを最低限にしておく努力が必要だ。また出荷は回収状況を見ながら確実に行い、回収が残っている状況では慎重に出荷時期を見極めることも必要となる。

スリランカの中古車ビジネスは、輸入制度が頻繁に変更され、また高年式車中心のため資金がかかるというリスクもある。しかし、言い換えれば安易な安売り競争が行われず、良質な中古車を高値で取引できるということから今後の成長が大いに期待できる市場ではないかと考える。


<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。
《川崎 大輔》

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