ホンダが2015年度中に発売するとしていた燃料電池車のプロトタイプを走らせてみる機会があったのでリポートする。
取材した10月25日時点ではまだ名無し状態であった新型燃料電池車だが、市販目前とあって、内外装ともこれが普通に売られていると言われてもまったく違和感がないレベルに仕上がっていた。燃料電池の出力の最高値は130kW(177ps)と、リース販売されていた旧型『FCXクラリティ』の100kWに比べて3割、昨年に先行デビューしたトヨタ『MIRAI』の114kWと比べても1割強のアドバンテージだ。
ただ、車両重量はFCXクラリティに対して200kg程度増加し、MIRAIと同様1.8t台になった。重量増の原因はひとえに最大貯蔵圧力70メガパスカル(約700気圧)の水素燃料タンクで、高圧に耐えられるように作れば自ずとその重量になってしまうのだそうだ。
実際に走らせてみてまず感じられたのは、FCXクラリティに比べてクルマとしての洗練性は比べ物にならないほど上がったということ。アイドル状態から急加速時まで騒音レベルはきわめて低い。また、車体側の騒音・振動処理もパワートレインからのノイズの低さに合わせ、おそらくコストバランスを考えれば限界に近いくらいの工夫がなされているように感じられた。
加速力は電動車両らしく強力。また、長時間乗ったらどう感じるかということはわからないが、ちょっぴり転がしてみた限りにおいては、ドライバーがパワーの盛り上がりを楽しく感じられるような味付けという点もなかなか良いのではないかと思われた。試乗会場はフラットな舗装路面で、ところどころミリ単位のアンジュレーション(うねり)があるという状況だったが、その環境下での乗り心地、防振性能はアベレージを大幅に上回るレベルだった。
東京モーターショーで一般にお披露目された後、今年度中には発売されるこの新型燃料電池車。公道でどういうパフォーマンスを見せるか興味深い。