【川崎大輔の流通大陸】ミャンマー整備ビジネスに求められる「ジャパンブランド」の構築

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ジャパンネクサスオートは、朝日トレードセンターと現地企業の50%ずつでミャンマーに設立した合弁会社で質の高い整備ビジネスを展開している。現地法人の代表取締役の松見俊信氏と、工場長である園田茂文氏にミャンマーでの整備ビジネスの魅力と課題について話を聞いた。

◆ミャンマーで整備ビジネスを含めた自動車アフタービジネスを行う魅力

ミャンマーで整備ビジネスを行う魅力は、「自動車市場の拡大に比例して整備を含めた自動車アフタービジネスチャンスが広がってきていることである」と松見氏と園田氏は考えている。

民政移管以降、車両台数は急速に増加している。ミャンマーでは公的な自動車流通の統計データはないが、直近のミャンマーの自動車保有台数は直近で60万台と言われている。FOURINが出す1000人あたり自動車保有台数(2013)の推計値ではミャンマーはわずか9.4台だ。

ほか、アジア諸国での1000人あたり自動車保有台数(2013)はマレーシアで394台、タイで207台、インドネシアで78台である。ミャンマーの自動車市場が将来的に拡大していくポテンシャルは大きい。自動車市場の拡大に比例して整備ビジネスの市場も広がると考えられる。更に整備工場運営を通じて多くの顧客との信頼関係を構築していくことで、新たな自動車アフタービジネスのチャンスも探っていくことができる。

ミャンマーは日本が約半世紀前に経験したモータリゼーションの波をミャンマーは今迎えようとしている。日本での経験蓄積をどのようにミャンマー社会に適合する形で活(い)かすことができるのかは難しい。しかし全力で取り組むだけの大きな価値はあるだろう。

◆ミャンマーの整備ビジネスの現状と今後の展望

現在ミャンマーでは、車検制度が確立されていない。このような現状では、定期点検の需要もほとんどなく、顧客管理ノウハウの蓄積もない。故障車への迅速な対応に追われているのが実態だ。更に、純正部品の流通の整備(在庫量やスピード)や中古部品のネットワーク管理など、日本では当たり前のことが整備されていない。今後、何らかの車検制度が整備され、新車販売も増加していくことが想定される。そうであれば、予防点検的な対応も求められ、整備ビジネス市場は拡大しサービスが多様化することが予想される。

ミャンマーの整備工場はヤンゴン市内で急速に増えてきている。日系企業の関与するケースも目立ってきた。近い将来、技術力、サービス内容などの違いなどで再編淘汰(とうた)が進むことになると思われる。更に、ミャンマーでは自動車産業政策自体が流動的だ。左ハンドル車への傾斜や中古車輸入規制の変動なども想定される。このような変化を視野に入れた整備工場の態勢づくりや、コンピューター管理システムでの顧客名、車両ナンバー、型式、整備履歴などの顧客管理ノウハウの蓄積が業績に影響すると考えられ、整備業界における課題の1つとなってくるだろう。

◆今後のジャパンネクサスオートの課題と方向性

ジャパンネクサスオートでの課題は「安定した運営体制の確立」であると松見氏は語る。現在スタッフは約60名。一方で離職率は高く、技術・接客などのある程度の教育を行っても、また最初からということが多い。顧客との信頼関係を一層緊密にさせるにはスタッフの技術力、定着率を高めることが重要課題である。それにより入庫促進のためのアプローチ活動や整備後のお礼と調子伺などが、よりスムーズに行うことができる。

今後の展開としては、「安定した運営体制を早期に構築し、サービス拡充の一つとしての第2工場確保の方向性を探る時期にきている」と松見氏は考える。氏は、「ミャンマー企業との合弁ビジネスにおけるスタンダードモデルとしての経営を目指していきたい」としている。

確かにミャンマーでは経済政策や規制など今後の方向性への不安要因も多いと言える。しかしその中でジャパンネクサスのようにミャンマーで着実に一定程度の集客を維持できている企業もある。その要因として2点あげることができる。1点目に現地提携先企業との関係性を重視し、長期的な信頼関係を構築するという経営スタンスを取っていること。2点目として2013年6月の民主化開始と同時にミャンマーに、整備工場を現地でオープンしジャパンブランドを構築してきたこと、である。

変化が起きている市場には、常に新たなビジネスチャンスが生まれることはどこの市場も変わらない。ジャパンネクサスオートは自ら日本人が現地に入り込み技術指導協力を継続することでジャパンブランドを構築している。更に現地提携先企業との長期的な信頼関係を維持できるよう配慮を行っている。このような日系企業の地道なアプローチがミャンマーの整備・アフタービジネスを大きな産業へと発展させ、新たなビジネスチャンスを生み出す一番の近道なのではないかと、今回のインタビューを通じて強く感じた。

<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科特別研究員。

《川崎 大輔》

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