鉄道の災害運休区間、台風11号の影響で微増…6・7月末

鉄道 企業動向
7月末時点の災害運休区間。6月末に比べ0.6kmの微増となった。
  • 7月末時点の災害運休区間。6月末に比べ0.6kmの微増となった。
  • 不通が続く気仙沼線の歌津駅ホーム。現在は線路敷地をバス専用道(写真手前)に改築し、「仮復旧」の扱いで代行バス(気仙沼線BRT)が運行されているが、JR東日本は鉄道を復旧を断念してBRTの運行を継続する意向を示している。
  • 盛駅に進入する大船渡線BRT。こちらも気仙沼線BRTと同様、JR東日本が鉄道復旧の断念とBRT継続運行の方針を示している。

災害による鉄道路線の長期運休区間は6月末時点が394.3kmで、5月末と変わらなかった。6月21日にはJR西日本が運営する福塩線の線路が落石で損傷。広島県内の府中~上下間で運転を見合わせたが、6月29日に再開している。

一方、7月は台風11号の影響で、西日本を中心に運転の見合わせが相次いだ。JR西日本の紀勢本線(きのくに線)は、山崩れによる線路への土砂流入で御坊~箕島間(和歌山県)の運休が長期化したが、7月26日に再開した。それ以外の路線も大半が既に再開しているが、能勢電鉄のケーブルカーのみ現在も運休が続いている。この結果、7月末時点の運休距離は394.9kmとなり、6月末時点に比べ0.6km増えた。

■JR北海道 日高本線 鵡川~様似(北海道) 116.0km
今年1月に発生した低気圧による高波の影響で、厚賀~大狩部間の線路脇の土砂が削り取られたため運休中。バスによる代行輸送が行われている。JR北海道は自社単独での復旧を事実上断念しており、仮に公的な支援を受けて復旧工事に着手しても、再開までには最短4年程度かかる見込みだ。一方、JR北海道は利用者の少ない路線や駅の廃止を検討しており、利用者が極度に少なかった日高本線の再開も厳しい情勢となっている。

■JR東日本 山田線 宮古~釜石(岩手県) 55.4km
2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。代行輸送は行われていないが、岩手県北バスと岩手県交通の路線バスが並行して運行されている。三陸鉄道が列車の運行を引き継ぐことを条件に復旧が決まり、今年3月から工事に着手した。

JR東日本は当初、段階的に再開する案を示していたが、沿線自治体の要望を受け、2018年度末までに再開する模様となっている。

■JR東日本 大船渡線 気仙沼~盛(宮城県・岩手県) 43.7km
2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。JR東日本は2013年3月からバス高速輸送システム(BRT)を導入。線路敷地の一部を活用したバス専用道を整備し、仮復旧の扱いで代行バスを走らせている。

現在のBRT運行区間は気仙沼~盛間(長部経由)と鹿折唐桑~上鹿折間、陸前矢作~陸前高田間。このうち気仙沼~鹿折唐桑駅付近間2.3kmと竹駒駅付近0.5km、小友駅付近~大船渡~盛間13.2kmは専用道を走行する。ただし大船渡駅付近は土地区画整理事業の実施に伴い、現在は一般道経由に変更されている。

今年7月24日に開催された沿線自治体首長会議で、JR東日本は鉄道の復旧を断念し、仮復旧扱いとなっているBRTの運行を継続する考えを示している。

■JR東日本 気仙沼線 柳津~気仙沼(宮城県) 55.3km
2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。2012年8月からBRTを導入し、線路敷地の一部を活用したバス専用道を整備した。

BRTは気仙沼線の不通区間と同じ柳津~気仙沼間で運行されており、志津川~清水浜間の中間部や不動の沢~気仙沼間などは専用道を走行。それ以外は一般道を走る。ただし志津川~清水浜間は早朝や夜間の一部を除いて専用道を通らず、一般道区間に設置したベイサイドアリーナ駅を経由する。今年6月27日からは、BRTの運行区間が前谷地~気仙沼間に拡大。前谷地~柳津間は鉄道とBRTが並行して運行されている。

今年7月24日に開催された沿線自治体首長会議で、JR東日本は鉄道の復旧を断念し、仮復旧扱いとなっているBRTの運行を継続する考えを示している。

■JR東日本 常磐線 竜田~原ノ町(福島県) 46.0km
2011年3月に発生した東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の影響で運休中。途中の夜ノ森・大野・双葉各駅は帰還困難区域、富岡・浪江・桃内・小高・磐城太田各駅は避難指示解除準備区域になっている。

並行する国道6号は2014年9月15日、自動車で通過する場合に限定して通行規制が解除されている。これを受けてJR東日本は今年1月31日から代行バスの運行を開始した。途中駅は全て通過している。

JR東日本は段階的な運行再開を考えており、竜田~富岡間は「3年以内(2018年まで)をめど」、浪江~小高間は「遅くとも2年後(2017年)」、小高~原ノ町間は「2016年春まで」に再開の見込みとしている。帰還困難区域の富岡~浪江間も今夏には再開時期が示される見込みだ。

■JR東日本 常磐線 相馬~浜吉田(福島県・宮城県) 22.6km
2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。バスによる代行輸送は不通区間より広い相馬~亘理間で行われており、宮城方の列車とバスの乗換地点も浜吉田駅ではなく亘理駅となっている。ルートを内陸側に移設する工事が進められており、2017年春にも列車の運行が再開される予定。

■JR東日本 只見線 会津川口~只見(福島県) 27.6km
2011年7月の豪雨で橋桁が流失するなどの被害。バスによる代行輸送が行われている。この区間はもともと利用者が極度に少なく、JR東日本は今のところ復旧の可否を明らかにしていない。

■大井川鐵道 井川線 接岨峡温泉~井川(静岡県) 10.0km
2014年9月の大雨で土砂崩れが発生し、末端側の接岨峡温泉~井川間のみ運行を見合わせている。復旧には相当な時間がかかる模様で、再開の時期は示されていない。

■JR東海 名松線 家城~伊勢奥津(三重県) 17.7km
2009年10月の台風18号により橋台の流失や土砂の流入などが発生。バスによる代行輸送が行われている。JR東海は当初、鉄道を廃止する方針を打ち出していたが、関係自治体が鉄道施設周辺の治山事業などを実施することを条件に復旧の方針に転換。2013年5月から工事に着手した。2016年春に再開する見込み。

■能勢電鉄 妙見の森ケーブル 黒川~ケーブル山上(兵庫県) 0.6km
台風11号の大雨による影響で、線路脇の法面(のりめん)が陥没。7月18日から運休している。再開のめどはたっていない。

《草町義和》

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