東京工業大学資源化学研究所の山元公寿教授と今岡享稔准教授らは、原子19個で構成する白金粒子(Pt19)が、現在の燃料電池に用いられている白金担持カーボン触媒の20倍もの触媒活性を発揮することを発見した。
将来、燃料電池に使用する白金を大幅に削減することで、燃料電池の低コスト化に寄与する基盤技術になる可能性がある。
山元教授らは「デンドリマー」と呼ばれる精密樹状高分子を用いた原子数が規定できる超精密ナノ粒子合成法を開発した。今回、この合成法を活用し、白金ナノ粒子の原子数を厳密に12から20原子の範囲でコントロールし、それぞれの酸素還元反応に対する触媒活性を評価した。
この結果、白金原子1つ加わるごとに触媒活性が不規則に変化するという結果が得られた。対称性の高い幾何構造を持つことから、これまで最も安定で有用と考えられてきた13原子の白金粒子は、最も活性が低く、それより1原子少ない12原子の粒子(Pt12)がPt13の2.5倍の活性を持つ。
また、19原子の白金粒子が最も高い活性を示し、Pt13に対する比活性は4倍。Pt19の質量あたりの活性は現在、広く用いられている粒径3~5ナノメートル白金ナノ粒子担持カーボン触媒の20倍にもなることが分かった。
これまで燃料電池触媒としては適さないと考えられてきた1ナノメートルを切る微小白金粒子の中で、高活性のものが見つかったことで、微小白金粒子を用いた燃料電池触媒の可能性が見えてきた。
実際の燃料電池システムに組み込むためには、導電性カーボン担体への触媒高密度担持「MEA」と呼ばれる燃料電池用膜電極接合体への組み込みと最適化、耐久性の向上などの課題があるものの、既存の技術転用が可能と見られる。近い将来の大幅に白金使用量を減少した燃料電池触媒の開発が期待される。
今回の研究は科学技術振興の機構戦略的創造研究推進事業「プロセスインテグレーションによる機能発現ナノシステムの創製」により実施した。
成果はドイツ化学誌「アンゲヴァンテ・ケミー国際版」に近く掲載される。