『2シリーズ グランツアラー』は、2シリーズの基本コンポーネンツを使ったBMWとして初の3列シートミニバン。
すでにデビューしている2シリーズアクティブツアラーにサードシートを追加したと考えてもいいが、リヤドアウインドウまわりの造形などは異なっている。ドライバーズシートに乗り込むとクッション、シートバックともにかなり固めの設定。エンジンを始動する前からこのクルマが走りにベクトルを向けていることを感じられる。
エンジンを始動しても、振動や音はほとんど伝わってこない。そう、この「218d」はディーゼルエンジン搭載車だ。セダンの「320d」に乗ったときは、けっこうディーゼル感があふれていたが、この218dは一世代進歩したと感じさせてくれる静粛性を持っていた。ただし、外に響く音は少々大きくディーゼル感が強い。
走り出すとディーゼルらしいしっかりしたトルク感に感動する。ディーゼルのなにがいいかと言えば、低速からしっかりとぶ厚いトルクがあることと、トルク変動が少ないこと。この特性は長距離を走る際にとくに効く。どっしりと落ち着いて長距離を走るには最高に楽なのだ。
乗り心地は固めだ。停止状態でも感じたシートの硬さは走っている際も同様。ドライバーはこの固めのシートのおかげでクルマの動きをしっかりと把握しながらのドライビングが可能。ミニバンとはいえBMWらしいハンドリングマシンを楽しむことができる。足まわりのしっかり感と、ハンドリングの正確さはBMWらしいもの。グランドツアラーはFFモデルだが、FFだと感じさせないしっかりしたハンドリング。足まわりはこれでもかというほどのニュートラルステアにチューニングされている。
ドライバーズシートに座っていると、じつに気持ちのいいモデルなのだが、これがリヤシートとなるとちょっと話が違う。セカンドシートは、シートクッションの前後長が短いこともあり、乗り心地があまりよくない。接触面が少ないから体圧分散しきれない。そのうえシートクッションが固めなので、乗っていて落ちつかない印象となってしまう。サードシートはもともと長距離乗車をねらった設計ではなく、近くに食事に行くときにみんなが乗れると便利というレベルの設定。
総合的にみるとグランツアラーはハンドリングを楽しめる3ラインシーターという位置づけと言っていい。BMWがハンドリングやドライビングプレジャーを捨ててまで3ラインシーターを作る必要はない。その個性自体がBMWなわけだし、その個性を買うのがBMWのユーザーなのだから。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。