【ルマン24時間 2015】四者四様のワークスマシン、勝機はどこに…決勝直前

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トヨタ TS040ハイブリッド
  • トヨタ TS040ハイブリッド
  • A・デビッドソン/S・ブエミ/中嶋一貴の1号車トヨタ『TS040ハイブリッド』
  • アウディ R18 e-tronクワトロ
  • アウディ R18 e-tronクワトロ
  • R・デュマ/N・ジャニ/M・リーブ組の18号車ポルシェ『919ハイブリッド』
  • ポルシェ 919ハイブリッド
  • ポルシェ 919ハイブリッド
  • ポルシェ 919ハイブリッド

6月13日の午後3時(日本時間午後10時)にスタートを切る第83回ルマン24時間レース。予選結果はポルシェの強さばかりが目立った格好だが、24時間の長丁場レースでは予選の占める重要性はスプリントレースほど大きくはないことも確かだ。頂点のLMP1カテゴリーに参戦するワークス4チームにフォーカスを当て、決勝レースを展望したい。

◆日産…3強に一矢報いることができるか、異色のFFレーシングマシン

日産が誇るスポーツカーの象徴とも言うべき『GT-R』の名を冠したLMP1マシン、それが『GT-R LM NISMO』だ。

エネルギー回生システムを組みこんだ60度の挟み角を持つ3リットル直噴V6ツインターボエンジンの「VRX30A NISMO」をフロントに搭載し、同じく前輪を駆動するという異色のFFレーシングマシン。日産はこのGT-R LM NISMOをルマンに3台持ち込む。

レーシングカーとして極めて特異な性格を持つこのマシンは、その性格は超ロングノーズのフォルムにも現れている。強大なV6ツインターボのパワーとブレーキング時の荷重に対応すべく、タイヤ幅は後輪が200mmなのに対して、前輪のそれはなんと310mmとなっている。予選ではトップのポルシェからおよそ20秒差とビハインドは小さくないだけに本戦でも苦戦を強いられることは間違いないが、なにが起こるか分からないがの24時間耐久レース。もしこの3台が完走を果たし、アウディ・トヨタ・ポルシェのいずれかよりも上位に食い込むようなことになれば、それを快挙と呼んで差し支えないだろう。

◆アウディ…5連覇中のルマン王者も着実進化、チームのバランスは随一

ディフェンディングチャンピオン、アウディのLMP1マシンは「R18」となってから5代目を数えるAWDレーシングカーの『R18 e-tronクワトロ』だ。V6直噴ターボディーゼル「TDI」の排気量は4リットルと昨年から変化はないが、走行中に回生できるエネルギー量がサルトサーキット1周あたり4MJに増加(昨年は2MJ)。フライホイールに貯蔵できるエネルギー量は700kJで、電気モーターの最高出力は200kW (272馬力) 以上に向上。エンジンは最高出力410kW (558馬力)/最大トルク850Nmとなっている。

過去2戦でもその速さと信頼性は際立っており、ストレートで圧倒的な速さを見せるポルシェに対してアウディは総合力で優位に立つ。また経験豊富なチーム・ヨーストが築き上げてきたサポート体制もアウディにとっては心強い。過去のレースでも、大クラッシュやトラブルに巻き込まれたマシンを驚異的な早さで修復しトップチェッカーへ導いた例は少なくない。5連覇中のアウディだが、今年も優勝候補の最右翼であることは間違いない。

◆ポルシェ…8MJエネルギー炸裂で抜群の速さ、不安要素は信頼性

16勝というルマン最多勝記録を持ち持つポルシェは今シーズンWEC復帰から2年目。LMP1マシン『919ハイブリッド』を大幅改良してシーズンに臨む。ここルマンでも3台体制を組み、本気で勝ちに来た。500馬力を発生する2リットルのV4ターボ、それをエンジンジェネレーターユニットから生み出される400馬力の大パワーが加勢する。8MJという途方もない回生パワーをストレートで炸裂させれば、他のLMP1と比べても伸びが明らかに違う異次元のパフォーマンスを見せつける。

スプリント力に優れる919ハイブリッドは予選にめっぽう強く、WEC第1戦・第2戦ともにポールポジションを獲得。決勝レースではいずれもR18 e-tronクワトロが立ちはだかり、惜しくもポディウムの頂点に立つことは適わなかったが、優勝はもはや時間の問題といえそうだ。ルマンの予選でもトップ3をポルシェ勢が独占、決勝レースにも大いに期待がかかるところだ。

懸念点とされるのは信頼性の問題。昨年のルマンではエンジン関係でトラブルが複数発生し、終盤までもつれたアウディとの優勝争いもエンジントラブルで脱落の憂き目に遭った。レースペースでは確実に他車の上を行くだけに、この不安要素をぬぐい去ることができれば、“ルマンの雄”ポルシェが最多記録を伸ばす可能性は十分にある。

◆トヨタ…厳しい戦い強いられる昨年のWEC王者、ドライバー奮起なるか

昨年のWECシリーズで5勝を挙げ、マニュファクチャラーズタイトルを獲得したトヨタ。昨年のルマンでは、レース中盤まで目覚ましい速さを見せながら無念のリタイアを喫したことは記憶に新しい。マシンは昨シーズンの改良版となる『TS040ハイブリッド』。

3.7リットルの自然吸気V8エンジンに「THS-R」と名付けられるハイブリッドシステムを組込んだこのマシン、エンジン+ハイブリッドシステムの総出力は1000馬力以上。今年のマシンはエネルギー回生量こそ6MJと昨年と同様だが、スーパーキャパシタの構造を変更し容量を増大させた。また空力パッケージの改善もおこなっている。

このように進化版のTS040ハイブリッドで挑んだ今シーズンだが、現在のところリザルトは芳しくない。WEC第1戦・第2戦ともにアウディとポルシェの後塵を拝しており、第2戦のスパ・フランコルシャンでは5位・8位という残念な結果に終わった。ルマン予選のタイムを見ても、ポルシェから7秒近く、アウディにも3-4秒差を付けられており、ここ一番の速さという点ではドイツ2強よりも一歩遅れをとってしまっている。またドイツ2強、そして日産も3台体制でルマンに臨んでいるのに対して、トヨタは昨年同様2台でレースに挑むことも不利。トップカテゴリーでのレース経験豊富なアンソニー・デビッドソン/セバスチャン・ブエミに加えて、ケガから復帰した中嶋一貴らドライバーの奮起に期待がかかるところだ。

《北島友和》

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