【土井正己のMove the World】自動運転2つの方向性…求められる「IoT」と「半導体」技術

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グーグルが自社開発した自動運転車の最新プロトタイプ
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自動運転が言われだしたのは、古くはアニメのスーパージェッター(1966年)に登場する「流星号」だが、現実的な話として語られだしたのは、2000年頃からだ。米国ではドローンと同様に軍事目的などで自動運転の開発が進み、その後、2011年にネバダ州で自動運転の試験走行を認める法律が出来上がると、早速「グーグル・カー」が公道で試験走行を開始した。

日本も遅れていたわけではない。2005年に名古屋で行われた「2005年日本国際博覧会」のトヨタパビリオンでは、「i-unit」という一人乗りモビリティが、GPSと車車間通信、ジャイロなどを使用して、約10台による完全自動走行でのダンス・ショーを会期中一度も接触することなく実施している。現在は、各自動車メーカー、そしてグーグルやアップルも加わり、自動運転の技術を競っている。

◆ 自動運転、2つの方向性

私は、自動運転には2つの発展の方向性があると思う。一つは、既存の自動車がベースとなり、現在の道路上での事故を徹底的に減らすための技術発展。例えば、ドライバーが酒気帯びのため、居眠り運転に入ったクルマがあるすると自動運転で安全に路肩に誘導・停車し、警察に連絡が行き、警察到着までエンジンを停止してしまうようなクルマだ。

もう一つの方向性としては、閉鎖された空間(猫もネズミも飛び出さない専用道路)で、上記の「i-unit」のようなモビリティが全てデジタルでコントロールされる新交通システムである。この場合、閉鎖空間終了後、(例えば自動運転用高速インターから自宅まで)の走行はマニュアル運転が可能でなければならない。この2つの方向性があると思うが、前者は自動車メーカーが、後者はITメーカーが主導権を握っていくのではないかという気がする。

◆ 「IoT」と「半導体」

しかし、両方についてコアになる技術がある。いわゆる「IoT」(Internet of Things)と言われる技術だ(クルマの場合「IoC」という人もいるがここでは「IoT」とする)。クルマがまるでスマホのように全てインターネットで結ばれ、クルマ内での「自律的機能」と各クルマから上ってくるデータをクラウド内で解析しシステムへの指示を出す「統括機能」の両機能をインターネットを介して司るのが「IoT」の役割となる。この両機能が、インターネット上で、キャッチボールを行い、クルマの操作が自動的に行われることになる。よって、キャッチボールのスピードと判断の正確性が人の命を預かるクルマにとって最も重要な技術であることは言うまでもない。そして、このキャッチボールのスピードと正確性を高める技術が日本で開発された「NANDフラッシュメモリー」という「半導体」だ。これは、従来のものに比べて集積度が高く、データを読み取るスピードが格段に速い。

◆ 「NANDフラッシュメモリー」、日本生産が世界の約5割

日本では半導体産業は「昨日の産業」というイメージが強いが、それはまったくの間違いだと思う。先ほど述べた「NANDフラッシュメモリー」の世界生産の約5割が日本で作られている。メーカーは、東芝とサンディスクという会社で、この両社の共同運営する日本の四日市工場が全世界のフラッシュ供給量の約半分の生産を担っている。サンディスクは、メモリーカードで有名だが、実は「NANDフラッシュメモリー」の生産では、サムソン、東芝と並んでトップを競っている会社だ。最近では、クラウドのストレッジ機能をスピード面やエネルギー効率面で高める新技術をどんどんと世に送り出している。こうした、システム側の技術が、自動運転には実は、非常に重要となってくると思う。なぜなら、0.1秒の判断の遅れが、重大事故に繋がるからだ。

クルマの自動運転技術については、百花繚乱のごとく自動車メーカーなどが技術を競っているように見えるが、実は、インターネット側のシステムコントロール技術が大変重要であり、ここを見落とした議論となってはいけない。2020年のオリンピックに向けて、日本は、実証実験など進めていくようだが、クルマ側の技術とシステム側の技術の両方に必要な半導体技術、生産体制にも再度注目すべきであると思う。

《土井 正己》

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