下落続く原油価格、底を打つタイミングの見極めは…中国需要、米供給に見通しのポイント

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ブルームバーグ アナリストでエネルギー(石油・ガス)担当のグレース・リー氏
  • ブルームバーグ アナリストでエネルギー(石油・ガス)担当のグレース・リー氏

ブルームバーグは2月3日、2015年における世界の経済産業動向をアナリストが解説するセミナー(「ブルームバーグ・インテリジェンス」)を丸の内の同社オフィスで開催した。

「2015年、石油価格下落の歯止めとなるのは?」と題した講演を担当したのはアナリストでエネルギー(石油・ガス)担当のグレース・リー氏。リー氏は、今後の価格変動を見通すうえで中国需要や米国シェールガス事業に目を向けることの重要性などを指摘した。

◆需要サイドからは中国、供給サイドでは米国シェールガス事業が重要

リー氏は、2015年の原油価格を見通すにあたり、2014年の石油価格推移とその要因分析の重要性を指摘。

リー氏は、「2014年石油価格の下落をもたらした重要な要素が5つある」と述べるとともに、「それらの要素は2015年の価格押し下げの原因となる」と説明する。その5つは以下の通り。

(1)(2007年から続くものであるため最も重要な要素ではないが)米国がシェールガスを生産してきた
(2)日本の成長鈍化による需要減(ユーロ圏では増加した)
(3)IEA(国際エネルギー機関)が需要の見通しを下方修正した
(4)イラクやリビアなどが再び輸出をしはじめた(OPECは需要がより低くなったとしても供給を続けるだろう、と公言している)
(5)米ドル高

2015年に入っても石油価格の下落は亢進しているが、ここで重要な問いは“石油価格が今年回復する見込みがあるか”ということだ。この問いを考える上で、巨大な市場である中国の石油需要がどのように変化するかをみることが必要だとリー氏は強調する。「グローバルな視点でみたときの石油需要は、中国に牽引される形で2016年にかけて上がるともいわれている」(リー氏)。

たとえば需要の観点から石油市場を考察すると、日本の“ポスト・フクシマ”が今日の需要を語る上で重視されることがあるが、日本で原子力から石油へ需要が推移した、石油需要が高まったというのは主要な理由にはなりえない。2009年から2015年にかけて41%もの需要の伸びを示している中国こそがやはり石油需要の高まりを語る上でカギとなる。

「例えば2009年ではエネルギー需要のほとんどをディーゼルエンジンが占めていたにもかかわらず2011年にかけて落ち込みをみせている。これは中国が自動車の購入制限策などを講じたことが影響している」とその影響力の大きさを指摘。また、供給サイドから考察すると、そのポイントは米国のシェールガス・オイル事業の損益分岐点がどこにあるのか、に帰着するという。

◆昨年よりあらわれるコンタンゴ現象

次にリー氏は、需要と供給とは観点を転じて、2014年の石油価格下落と2008年のそれとを比較しながら考察する。

MSCIアジア・太平洋インデックス(浮動株を荷重した株式指数、1987年12月31日の値を100として算出するもの)、BIアジア・太平洋石油・ガスインデックス、ブレント石油価格(第一限月)の三つの指標を見ると「2013年12月から14年3月にかけてはすべての指標が安定しており、強く相関しています。しかしその後その相関は乖離しはじめている」と指摘する。

さらにリー氏は2008年から2014年にかけての「ブレント原油価格(第一限月)ドル/バレル」の推移をあらわすグラフを示しながら、売買約定しなければならない期限に近づくほど価格が高くなる“コンタンゴ(Contango)”現象が昨年の終わりから顕著にあらわれていることを指摘する。コンタンゴがみられることは、今日わたしたちがそんなに多くの石油を必要としていないことを示唆する、リー氏によれば、将来のコモディティを所有することに優先的にお金をかけたいという人々の欲求があることがその理由にあり、この欲求が、今日のコモディティを買い、そして所有・貯蓄するために必要となるコストを払うことに対する欲求よりも強いのだという。

◆ペトロチャイナ、シノペックはどう動く…設備投資は減速し川上市場を重視

この他、中国企業の動きについても言及された。ペトロチャイナ(Petro china、中国石油天然気)、シノペック(Sinopec、中国石油化工)は生産拠点を、よりオペレーションの効率化が図れる国に移そうとしている。また他の企業への所有権移譲も進めている。設備投資は減速する。

またリー氏は、設備投資のなかでも川上分野での投資が今後重視されると見通している。「川上分野での設備投資は20%から多くても60%前後にとどまる一方で、川下市場での投資は70%を超える」。したがって今後、川上分野がこれまで以上により一層重視され、この傾向は日本の市場や日本への輸出とも強く関連してくる。また精油企業に対しては、原油安が進むことでプラスの影響が与えられるという。

《北原 梨津子》

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