【日産 GT-R & ニスモ GT-R 試乗】ドライバーを選ばないドライビングプレジャーこそ真骨頂…中村孝仁

試乗記 国産車
日産 GT-R 2015年モデル
  • 日産 GT-R 2015年モデル
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いきなりニスモは荷が重かったので、ノーマルのプレミアムエディションでスタートした。最後に『GT-R』に乗ったのは4月のこと。その圧倒的パフォーマンスに見事に打ちのめされたのをよく覚えている。正直言ってこのパフォーマンスを絞り出して使おうと思ったら、サーキットしかない。それでも100%対峙して自分の腕とGT-Rのどちらが勝つかと言われたら、GT-Rでしょう…と言わざるをえないほどその動力性能はけたたましい。

エンジンルームを開くと、フロントミッドシップされたV6ユニットの先端に、エンジンを組み上げた人の名前が刻印されたプレートが貼られている。その脇には「匠」の文字が…。GT-Rのエンジンは1基1基がこのように丹念に作り上げられている。

決して静かとは言えないギアノイズをバックグラウンドミュージックに走り始めた。勿論トランスミッションはマニュアルモードである。シフトアップの度にブブッと短い独特のサウンドが伝わってくるが、それにしてもシフトアップの素早さと言ったらない。スピードを上げればあげるほどその印象が強まる。ダウンシ フトでも明確な反応を示してくれる。それをシフトショックなどという言葉で表現するのは憚るのだが、その軽いショックと、シフトアップの際に発するブブッというサウンドが心地よいと感じる。

乗り心地は実に快適である。そうはいってもそれはセダンの快適さではない。走りに必要な路面からのインフォメーションを最大限に残しつつ、それでいてなお快適さを保っているというべきだろう。クッションの厚い、セミアニリンの本革シートのなせる業かもしれない。しかし、頭の中は次のコーナーをどのように抜けようかという考えに支配されていて、正直なところ、こうした局面で乗り心地などどうでもよいのである。それほどドラ イブが愉しいクルマだ。

2015年のGT-Rで新しくなったのは、まずはこのトランスミッションである。変速性能の向上を図ったというが、それが変速スピードの向上だとしたら、それは見事なまでに進化していて、加えてシフトフィールまで向上されているとしたら少なくともスポーツカーのそれとしては完璧である。

タイヤも新しい。装着タイヤはダンロップ『SPスポーツMAXX』と呼ばれるもので、当然のことながら開発過程で日産側の要望が取り入れられたものになっているという。そしてブレーキも新しくなった。ブレンボ製のフルフローティングドリルドローターにスチール系の高剛性パッドを採用している。改善された部分はペダルタッチやコントロール性の向上だそうだが、少なくともタッチに関しては素晴らしく良く、イニシャルでまずグッと効いて、そこから踏み込むにしたがって踏力なりの効きを体感できる。もっとも、トップスピードが300km/hに達するクルマで、その半分にも満たないスピード領域での話だから、まあ良くて当然だ。

550psというパワーはそれをオンロードで試すこと自体が無謀。しかし、見事なまでに調教された駆動系はスピードの如何に関わらず、楽しさを演出してくれる。注意しなくてはいけないのは、いつの間にやらスピードが異様に高くなっていること。決して自分のドライブが上手くなったのではなく、クルマに乗せられているのだが、あっと思った時には驚くほどのスピード領域で何事もなかったかのようにクルマはコーナーを抜けているということがしばしばあった。

さて、いよいよ『ニスモGT-R』である。プレミアムエディションから比べたら半分ほどしかないクッションのレカロ製バケットである。しかしおさまりが良くてホールド性が高いから、一旦着座してしまうとピタッとはまってしまう。このシートのかけ心地を除けば、イニシャルでニスモとプレミアムエディションの差はそれほど大きくない。ところがである。

600psは伊達じゃない。プレミアムエディションで速いと思っていたコーナリングスピードがさらに上がる。さすがにプレミアムエディションの持っていた快適性はないが、粘りつくようなコーナリングフォースはドライバーにとてつもない横Gとなって襲いかかってくる。立ち上がりの加速感もやはりプレミアムエディションより一回り強い。何というクルマだ。

条件の良い気候で(当日は気温マイナス3度でとてもじゃないがタイヤが上手い具合に発熱してくれるような状況ではなかった)、ランオフエリアの広いサーキットなら全開を試してみたいが、状況がそれを許さない。元々素性の良いボディをさらにボンドで強化したGT-Rニスモの剛性感の高さはここに極まったという印象である。

この際、それが4シーターであろうが背の比較的高いクーペであろうが、そんなことはどうでもよくなる。ここまで高度にチューンされて、そのポテンシャルをかなり容易に引き出せるクルマはそうはない。GT-Rの良さはまさにドライバーを選ばずに最大のドライビングプレジャーを与えてくれるところにある。 

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを 経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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