「GT-Rはスーパーカーではない」4座へのこだわりと“速さ”の追求…日産 GT-R 開発チーフ

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日産 GT-R 2015年モデル
  • 日産 GT-R 2015年モデル
  • 日産自動車 ニスモビジネスオフィス チーフ・プロダクト・スペシャリスト田村宏志氏
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「GT-Rですか?確かにスーパースポーツではあっても、あれはスーパーカーじゃないですよ。僕の中ではスーパーカーって言えば、車高が1mそこそこで、見るからにそれらしいイメージを持ったクルマです。だから、最近車高が高くなったフェラーリなんて、スーパーカーの範疇から外れちゃうんじゃないかって思うほどなんです」

こう語るのはGT-Rの開発に取り組むようになって14年、チーフ・プロダクト・スペシャリストになってすでに8年の歳月が流れる田村宏志氏の言葉である。だからこそ、GT-Rに込める熱意と情熱が言葉の端々に表れていた。確かにその動力性能や運動性能に関してはまさにスーパースポーツだと思う。しかし、ならば何故、より運動性能を高められる本格的なクーペデザインにせず、ある意味では中途半端な4シーターに拘り続けるのか?その部分を単刀直入に聞いてみた。田村氏の答えはこちらの想像した通り、

「スカイラインGT-Rの名残ですね。4座への拘りは捨てられないんです」と。

しかし、その拘りを捨てずとも、専用パーツを組み込んだ「Nアタックパッケージ」ならば、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェを7分8秒679という、驚異的なタイムを叩き出して見せる実力を備えているのである。この領域に達するスーパースポーツはほとんどいない。ポルシェ『911』があくまでもRRというレイアウトに拘るように、GT-Rはこの先も4シーターに拘り続けるのかもしれない。一方で1500万円という『ニスモGT-R』の価格に対して、田村氏はこうも擁護した。

「日産という会社のビジネスモデルとしては全社横断の商品単価がおおよそ200万円、これに対してドイツの高級車メーカーではそれが600万円に跳ね上がります。つまり、あと500万円余計に費用をかけられるなら、そりゃあもっと高級な内装素材を使ったり出来るわけですが、GT-Rの場合は動力性能と運動性能にお金がかかった結果として今があるわけなんです。だからこの部分ではどこにも負けないだけの自信がありますよ」

今回試乗したGT-Rはニスモ仕様とノーマルのプレミアムエディション(1058万7240円)。これに対してニスモバーションは1501万5000円。2015年モデルは標準GT-Rのラインナップにニスモが足を手がけたトラック・エディションが新設されて、そちらの価格は1170万0720円である。極めて単純にそこからおよそ400万アップがリアルニスモであって、このリアルニスモバーションはボディをボンドで強化した特殊なものが使われている。足を全面刷新しタイヤ、バネ、ショック、ブッシュなどをすべて一新したノーマルGT-Rからさらに強化した足回りを施し、この強化ボディが加わるのだから、刷新した足がさらに活きることは、乗らずともわかっていただけると思う。勿論パワーは標準のGT-Rに対して50ps高い600psを実現している。

ご存じの通りニスモGT-Rは2014年2月から発売されているわけだが、2015年モデルはこれだけの進化を遂げて、再登場した。内外装に関しては何ら手を加えていないから、その違いを外から窺い知ることはできない。こうした進化の手法はドイツのメーカーが好んで使う。まさに見えないところに手を加えて走りを良くしていくのが今のGT-Rの進化だとするなら、今後も実に楽しみである。GT-R誕生45周年を記念した限定車も僅か45台ながら用意されるという。

かつてレースにおいて50連勝(実際は49連勝だそうだが)というとてつもない偉業を成し遂げて、レース界において伝説となったGT-R。今、ロードカーの世界で再び伝説を作ろうとしているのだろうか。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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