ホンダのセダンラインナップ強化の一翼を担うべく、12月1日にリリースされた新型コンパクトセダン『グレイス』。セダンモデルのユーザーが重視するファクターの最右翼は居住感であろう。もちろんまだオンロードで走行はしていないが、運転席のドライビングポジションを合わせたうえで各席に座ってみた印象は…。
まずフロントシート。1.5リットル級のBセグメントコンパクトとしては標準以上のサイズが与えられている。基本的には『フィット』の骨格に準じたものだが、上位グレードのフルレザーインテリア版ではSUV『ヴェゼル』のレザーシートモデルと共通の体圧分散設計を持つ座面となるようだ。もともとフィットは運転席まわりのスペースは狭くなく、採光性も優れている。グレイスもその美点はしっかり継承しており、圧迫感は少なく、視界も良好であろうと感じられた。
インパネのデザインはフィットと大きく異なるポイント。フィットがいろいろな要素を盛り込もうとしすぎてごちゃごちゃしたイメージであるのに比べ、グレイスはずっとシックに仕上がっている。海外ですでに売られている『シティ』は、サイズはコンパクトクラスだが価格は高く、現地のカスタマーにとっては高級車の部類に属する。インパネの計器類の子供っぽさは相変わらずだが、全体的には手堅く上品にまとめたという感じだ。セダンモデルとしては好ましい仕立てだろう。助手席も圧迫感は少なく、開放的だ。
次にリアシート。グレイスはフィットをベースしており、骨格もかなりの部分を共有している。そのままパッケージングしたらずんぐりむっくりとした形でスタイリングが見られるものではなくなってしまうため、ルーフの後端を限界まで落とし込んでいる。その影響がリアシートの頭上空間にあらわれており、ヘッドクリアランスはセダンとしてはかなり狭い。
が、それはホンダなりのロジックでそうなったという部分も少なからずある。ヘッドクリアランスを稼ぐならば、リアのヒップポイントを下げればいいのだが、グレイスの開発陣はそのアプローチを取らず、頭上空間より前後席のヒップポイントの位置関係を良好に保つことを優先してパッケージングを行っていた。身長175cm以上のパッセンジャーがリアに座ると頭上空間はかなりタイトになる半面、後席のアイポイントはしっかり高さが確保されており、サイドウィンドウからフロンドウィンドウにかけてのパノラミックな景色の見え方はかなり良さそうだった。難をいえば、背もたれのアングルがやや寝気味にすぎることだが、これはアジアのユーザーの好みを反映したものなのかもしれない。ちなみに足元空間は十分な広さが確保されていた。
最大のライバルになるであろうトヨタ『カローラ アクシオ』のハイブリッドモデルと比べると、親しみやすさ、カジュアルさでアクシオがリード、高級感や居住感でグレイスが優越するのではないかと思われた。このあたりはいずれ長距離テストドライブを行い、あらためて皆様にお伝えしたい。